第39話 お礼(危険物)
二人を家に送り帰宅すると、もう
さて、薫はどこかな……?
玄関に靴はあったが、リビングに姿はなかった。一応「ただいま」を言っておきたかったのだが。
取り敢えず手を洗っておこうと脱衣所を兼ねた洗面所に向かう。
「ん? この音は」
扉を開けたところで聞こえてきたのはシャワーの音。どうやら薫は入浴中のようだ。
ふむ、ここは事故を回避するためにも早く手を洗って出るとするか。
なんてちゃちゃっと手を洗って、俺は薫とバッタリ出会すこともなく自室へと戻った。
◇ ◇ ◇
部屋に戻った俺は、ポケットの中にある二つのブツを取り出す。
一つは
さて、開けるか。
両方とも家に帰ってから開けてほしいと言われていたので、帰路の途中も開けずにいたのだ。
もし中身が変なものだと薫に怒られるかもしれないし、早く開けてしまおう。
俺は二つをベッドに並べ、一度大きく深呼吸をして覚悟を決める。
よし、どんな変なものでも大丈夫だ。
「どっちから開けるか……」
少し悩んで、適当にもらった順でいいかと決め一之瀬さんからもらった袋を開け、中に手を突っ込む。
ん? これは布か?
ハンカチ辺りだろうかと推測しながら取り出すと、それは薄いピンク色で、やけにデザイン性が高く細かくフリルがあしらわれている。
なんか手触りもハンカチより柔らかいしスベスベしてるし……ハンカチなのか?
と首を傾げていると、手に持っている布がヒラリと開いた。
それは四角というよりも三角形で、大きな穴が一つ、やや小さい穴が二つ空いている。
それはよく家事をしているときに見ているようで──そう、つまりこれはパンツだった。
「……よし、忘れよう。明日朝一で返そう」
袋の隣にハンカチを置くと、袋の中に手紙があるのを見つける。
開いてみるとそこには女の子らしい字で「今日一日穿いていたものです。楽しんでください」と書かれていた。
誰が楽しむかバカ。
俺は手紙をゴミ箱へ投げ捨て、九条院先輩からもらった茶封筒に目を向ける。
さて、こっちはどんな爆弾が入っているのやら。
一之瀬さんからは穿いていたパンツが渡され、ここまでくると逆に中身が気になってきた。
俺は再び深呼吸をして心を落ち着かせ、茶封筒に手を掛ける。
封筒の口は止めておらず、中に白い紙が見えた。
手紙……ではないだろう。一之瀬さんみたいに一度家に戻ったわけでもないし。
俺は封筒から紙を取り出し開いてみる。やけに大きい。
というか、これは……、
「婚姻届じゃねぇかっ!」
俺は驚きその紙をベッドに叩き付ける。
こんなもんを渡すとか九条院先輩は頭イカれてんのか?
婚姻届には丁寧に九条院
落として変な
そう思いながら俺は婚姻届を手に取り、ビリビリと細かく破く。
窓が空いていたのか、不意に風が吹き込んできて紙が舞い上がる。
「やっべ、掃除大変だな」
バラバラになった紙を追って後ろを向くと、なぜか扉が開いていて──、
「お兄ちゃん、これはなにかな?」
薫が持ち上げた紙には堂々と「婚姻届」と書かれてあった。最悪な場所を見られてしまった。
薫は光の消え失せた瞳を俺に向け、
「説明してくれるよね、お兄ちゃん?」
「は、はい……」
俺は思わず正座をするのであった。
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