第34話 薫と休日
件の悲惨な事件から一週間が経とうとしていた。今はもう俺の四股疑惑はすっかり消えて、平穏な日々が戻ってきた。
まぁ代わりに、俺が
それはさておき、今日は日曜日。二日しかない休日の内の二日目。明日に学校を控えた、天国のような、地獄のような日である。
そんな憂鬱な日の午前。朝食を済ませた俺はリビングで
ここ最近は特に疲れが溜まることがあったし、午前からこうしていないと明日までに回復できない。
そういうわけで、俺は薫とイチャイチャしているのだ。邪魔されようものなら俺は全力でキレるだろう。
「いやぁ、こうするのは久々な感じだなぁ」
「えー? 昨日もしてたでしょー?」
薫は振り向いて俺を見ながら困ったように微笑を浮かべる。
確かに、昨日も今日と同じように薫を膝の上に乗せて頭を撫でていた。だが、一日そうしていたくらいではこの二週間近くの疲労は癒えないのだ。
なんて力説をすると、またまた薫は困ったように笑い、自らの体重を預けるようにもたれ掛かってきた。
「まぁ私はお兄ちゃんのものだからねー、好きにしていいよ?」
そうイタズラにからかってくる妹に、俺はただただ苦笑するしかない。
まったく、俺が実の妹に発情する超変態野郎だったらどうするんだよ。
なんて冗談はさておいて。
俺は「じゃあお言葉に甘えて」と俺は薫の頭を撫で回す。
「えへへ♪」
「薫は頭撫でられるの好きなのか?」
ご機嫌な声を漏らす薫にそう質問すると、「んー」と唸りながら薫は首を傾げた。
「そうだなぁ、お兄ちゃんに撫でてもらうのが好きかな」
そうはにかむ薫が、この世で一番可愛い。
「そうかぁ、それは光栄だな」
俺は感極まり、少し乱暴に撫でてしまう。
薫は「ひゃーっ」と楽しげな悲鳴を上げて、ケラケラと笑いだす。
いやぁ、楽しいなぁ。
◇ ◇ ◇
薫をナデナデしていると、気付けばあっという間に時間は経ち昼過ぎ。
イチャイチャタイムを一旦終了して薫が作ってくれた親子丼を食し、俺たちは少し休憩をしていた。
「おにーちゃん、食べてすぐ寝たら牛さんになるよー?」
そう苦笑を浮かべる薫は、優しい手つきで俺の頭を撫でてくる。
俺は微睡みを感じながら薫を見上げる。目が合うと薫は恥じらうように頬を赤らめた。
「いやー、薫のご飯でそうなるなら本望かなぁ」
「もーっ、そんなこと言ってから」
叱るように俺の額を小突き、薫は頬を膨らませる。少しの沈黙がすぎ、二人揃って吹き出す。
今、俺は薫に膝枕をしてもらっていた。
以前にも何度かしてもらっているが、やはりいい。ナデナデするよりも断然疲れが癒えていく。
「……(じー)」
「……」
「……(じー)」
薫のナデナデに癒されていると、ふと薫からなにやら熱い視線が送られていることに気付く。
なんだろうと首を傾げていると、薫はおもむろに屈みだし俺の耳に顔を近付けると──、
「ふぅー」
「はぅあっ!?」
突如耳に吹き掛けられる息に、俺は思わず頓狂な声を上げてしまった。
薫は少し顔を離し俺を見つめると、嗜虐的な笑みを浮かべて今度は遠くから耳目掛け息を吹き掛けて──「ふぎゃぁっ!?」
「お兄ちゃん、おもしろーい♪」
Sだ、薫がSに目覚めた……。
妹のあらぬ成長に、頬が引き攣るのを感じる。
俺は止めさせようと手を伸ばそうとし、薫が俺の手を掴んだ。
かと思うと、薫は掴んだ俺の手を見つめ、パクリと人差し指を咥えた──え?
「ちょっ、薫? 薫さーん?」
「はむっ、ちゅっ」
俺の呼ぶ声が聞こえないのか、薫は熱心に俺の指を舐める。
やや熱を持った、ヌルヌルした舌が俺の指を舐め回す。
ヤバい、妹が変なのに目覚めた。
「薫、待て、少し落ち着け。お願いだから落ち着け、な?」
そう説得を入れるも、薫は没頭しているのかまったく聞いてくれず、無心に俺の指を舐めている。
嗚呼、神よ……妹に変なこと吹き込むの止めていただけませんかね?
結局、暴走した薫が正気に戻るまで三時間以上の時間を要した。
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