第31話 進展のしない通学路
俺のありもしない噂を流した犯人を捜し初めて一週間。俺は相変わらず視線を集めながら過ごしていた。
当初は俺も犯人捜しに参加しようと思っていたのだが、今一番注目を浴びている俺が動けば相手にも気付かれるかもしれないということで、犯人捜しは五人に任せたのだ。
正直
あぁ、
さて、この一週間のことを説明すると、薫と一之瀬さんが一年生、鳴美が二年生、九条院先輩が三年生で犯人を探ってくれていた。
だが向こうも利口なのか、なかなか尻尾を掴ませてくれない。
そう、俺たちはこの一週間、苦戦を強いられていた。
◇ ◇ ◇
もう一度挟んだ休日が明け、月曜日。今日も今日とて、俺は薫と仲良く朝の通学路を歩いていた。
もう二週間経つというのに視線は絶えず、そろそろ自分が人気者のアイドルだと錯覚してしまいそうである。
いや、冗談だけど。
「お兄ちゃん、ごめんね」
ボソリと薫が謝る。
「まだ犯人見付からないや」
「いや、仕方ない。なんせ相手は男子だからな、異性だと少々探りづらいだろ」
そうフォローを入れると、薫は苦笑を浮かべた。
「そうだけど、お兄ちゃんのためだし大丈夫」
「ありがとな、薫」
俺は感謝の気持ちを込めて頭を撫でてやる。
薫は幸せそうにはにかんで、猫のごとく「んふぅ♪」と喉を鳴らした。
「むぅ、薫ちゃんだけズルいー」
薫とイチャイチャしていると、反対側から茶々を入れられた。
そんな空気の読めないことをするのは、さも当然のことのように俺たち兄妹と登校を共にしている幼馴染み、鳴美。
今回の件で助けてもらっているとはいえ、そも噂が流された理由の一人は鳴美だ、素直に礼も言えない。
というか、こういうときに邪魔するのは本当に、マジで止めてほしい。癒しが足りなくなる。
野次馬は去れ、なんて意味を込めてシッシッと手で追い払う。
すると鳴美はいっそう不機嫌そうに頬を膨らませ、ジトーっと睨んできた。
「酷いよけーくん」
「いや、これは暗に、周りに噂が作り話だということをわからせるための行動だ」
「他意はない」と言い張ると、鳴美は「そっか!」と納得したように手を叩き、
「──って、嘘だよね!? けーくん昔から私に対して酷いよね!?」
「チッ」
こういうときだけ頭が回るな。
「ねぇけーくん、その舌打ちはなにかな? ねぇなにかな!?」
グイグイと迫ってくる鳴美の顔を押さえ、全力で押し返す。
だがさすが運動系。薫と腕を組んでいるから全力を出せないが、それでも俺の方が圧されている。
あぁもう、ウザい!
俺は押し退けることが不可能だと察すると、一度だけ全力を使い鳴美を押し離し、その隙を突いて──
「じゃあな鳴美!」
薫の手を引っ張り走り出した。
後ろからなにか聞こえてきたが、そんなのは気にしない。
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