第12話 思わぬお泊まり/鳴美の決意
「いやぁ、
夕食の席、
それに対し、俺の正面に座る鳴美は照れたように「にへへ♪」とはにかんだ。
「だってぇ、けーくんがかっこよくて~♪」
頬に手を当て体を捩らせる鳴美。その姿に薫は楽しそうに微笑んでいる。
どうしてこうなった。俺は数時間前の記憶を遡る。
──足を捻挫した鳴美を家まで送ることとなった俺は、鳴美に肩を貸しながらゆっくりと帰路を歩いていった。
道中鳴美は何度も「ありがとう」や「ごめんね」を繰り返し、正直とてもしつこくてウザかった。
いつもより時間を掛け帰った俺たちは、まず鳴美の家に入った。保健室である程度手当てをしてもらってはいたが、改めて手当てを施すためだ。
それからしばらく経ち俺は薫の待つ家に帰ろうとしたのだが……そこで鳴美の元に、鳴美の母からLINEが届いた。内容は『帰れなくなったから
かくして、鳴美は今日俺の家に泊まることとなったのだ。
改めて思い出してもため息が出る。
なんてタイミングの悪さなんだ。
鳴美が来たことによって俺と薫の憩いの時間は奪われ、癒しがなくなってしまった。
「薫ちゃん! オムライス美味しいね!」
「ふふっ、ありがと♪」
微笑ましく会話する二人(片方はうるさいが)に、まぁ別にいいかという気持ちにならなくもない。
だが、それにしても鳴美の母はなにを考えているのだろうか。俺とて一般の男子高校生。そこに一人娘を預けるなど、普通は考えないと思うが。
親娘揃ってバカってことか。
俺はそう納得し、薫の愛情(鶏肉)が詰まったオムライスを口に運んだ。美味しい。
◇ ◇ ◇
side鳴美
薫ちゃんの作ったオムライスを沢山食べたあと、リビングでくつろいでいるとお母さんから再びLINEが送られてきた。
なんだろうとメッセージを確認すると、綴られていたのは『この機会に慧くんとヤッちゃえば?』という文字。
私は堪らず赤くなっているであろう顔を両手で覆った。
お母さんはなにを考えてるのぉぉぉおおおっ!?
と叫びそうになるのを必死で堪えた。今台所には薫ちゃんがいる、もし私が叫んで興味を持たれたら堪ったものじゃない。
ただ、けーくんが部屋に戻ってくれてたのが幸いかな。
私はホッと息を吐き、改めてお母さんから届いたメッセージを読む。
うん、最初に読んだときと変わってない。つつつっ、つまりあれだよね? その、お母さんは私とけーくんの仲を認めてくれてるってことだよね? 親公認ってことだよね?
私は足をバタつかせながら、だらしない笑みを浮かべる。
で、でもまだソレは早いというか、ちゃんと順序を踏まえた方が安心だろうし……えへっ。
お母さんから送られたメッセージのせいで思考回路が爆発し、どんどん暴走していく。
もしかして、今日の夜が初夜になっちゃったりして──。
「鳴美ちゃん?」
「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
妄想を膨らませていると、突然後ろから声を掛けられ思わず頓狂な声を上げてしまった。
確認すると、声を掛けてきた薫ちゃんは私の声に驚いて床に腰を打ち付けてしまっている。
「だだだっ、大丈夫薫ちゃんっ」
「は、はい、大丈夫」
薫ちゃんは立ち上がると、「それにしても」と尋ねてくる。
「どうしたんですか? 変な笑い声上げて」
「ううん、なんでもないから」
「安心して」と伝えると、薫ちゃんは「わかりました」と頷いて台所に戻っていった。
あっ、そういえば。
「薫ちゃん!」
「な、なんですか?」
「……見た?」
「え?」
「スマホ、見た?」
そう尋ねると、薫ちゃんは「見てませんよ?」と言いコテッと首を傾げた。
ふぅ、メッセージ見られなくてよかった。
私は安堵に息を吐き、「なにかあったんですか?」と尋ねてきた薫ちゃんに「なんでもないよ」と伝える。
私は深呼吸を繰り返して、もう一度メッセージを見つめる。少しだけ、期待と不安で鼓動がうるさい。
……よし、入念に体を洗おう。
取り敢えずそれだけを決意して、薫ちゃんが食器を洗い終わるのを待った。
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