第6話 妹と朝チュンとラッキースケベ
朝起きると、そこには妹がいた。
……いやいやいやっ! 待て俺落ち着け! なに妹と朝チュンしてんの!? なに!? 事案ですかそうですか! どうすんだよ俺ぇぇぇぇぇっ!
突然のことに冷静さを欠き、俺は内心で叫び続ける。
いや待て、俺は昨日早めに寝たはず。そのとき
徐々に冷静になっていき、俺は現状把握に勤める。
まず、ここは俺の部屋。俺たちが寝ているのはマイベッド。俺は風呂上がりからの部屋着のまま、薫は──!?
シーツを捲り確認すると、薫のパジャマは胸元のボタンが外れており青色を基調とした可愛らしいデザインの下着と柔らかそうな肌(敢えて伏せておく)が姿を現していた。
ぐふぉっ!(クリティカルヒット)
妹のあられもない姿に、俺は朝から大ダメージを負う。
くっ、ライフがゼロになる前に薫を起こさねば……。
俺はなるべく視線を逸らしながら、薫の肩を揺さぶる。
「か、薫ー、起きろー」
そう声を掛けるも、帰ってくるのは「すぅ」という可愛らしい寝息だけ。
も、もう少し強く揺らした方がいいのか?
「起きろー」(ゆさゆさ)
「すぅ……ふにゃぁ……」
ぐはっ!?
突如漏れた「ふにゃぁ」という寝息に、俺は悶えずにはいられなかった。
か、可愛すぎるだろ……やべぇ、起こしたくなくなってきた。
そう考えるも、遅刻しては困ると思い是が非でも起こすことを決意する。
「薫起きろ、朝だぞ」(ゆさゆさ)
「すぅ……」
「起きろ薫、もう朝だ」(ゆっさゆっさ)
「すー」
「おーきーろー」(ゆさゆさゆさ)
「……すへっ」
ん? 今なにかおかしかったような、笑ったような気がしたが。
俺はジーっと薫の顔を見つめる。
だが、これといっておかしい反応はなく、先程までと同様に「すぅ、すぅ」と寝息を発てているだけ。
勘違いかと納得し時計を確認すると、デジタル時計には六時二十分と表記されていた。
あれ? そろそろ起こさないとマズいのでは?
「おい薫起きろ! そろそろヤバいぞ!」
焦った俺は今まで以上に強く揺らす。
それが悪かったのだろう。薫の肩を押したと同時にスルッとパジャマが滑り、
「──あ」
ボタンが外れていたこともあり、薫の慎ましいモノが露となったのだ。
「……」
ど、どうしよう……。
俺は激しく動揺する。仕方ない、天使な我が
いや、そんなことより! 取り敢えず着せ直すか──
「おっ、おおおっ……!」
「なっ!?」
冷静になりパジャマを着せようと手を伸ばしたところで気付く。薫は顔を真っ赤に染め上げ、半開きになった口から声が漏れていた。
「お兄ちゃんの変態──────っ!」
「ごめんなさいぃぃぃっ!?」
◇ ◇ ◇
「お、お兄ちゃん、ごめんね?」
「いや、大丈夫だ」
朝食の席。俺はずっと薫に謝られていた。
俺の頬には赤い手形がついている。そう、さっき薫に思いっきり叩かれたのだ。それを薫は申し訳なく思っているらしい。
いや、事故とはいえ薫のあんな姿を見てしまったのだ、本来なら謝るのは俺の方なのだが。
そんな言葉を言ったところで薫の気が収まるわけではないので、俺は申し訳なさそうに俺を見つめる薫の頭を撫でてやる。
「はふっ、ふにゅぅ~♪」
不安そうに固まっていた表情はみるみる弛緩していき、だらしのない声が口から漏れ出す。
うん、やっぱり薫は可愛い。
俺も釣られて笑みを溢す。
「ところで、どうして俺の部屋に薫がいたんだ?」
それは起きたときからの疑問。そもそも、薫が俺のベッドで寝ていなければ先程のようなラッキースケベ起こらなかったはずだ。
そのことを尋ねると、薫は再び赤面した。
「その……お兄ちゃんと寝たかったから」
「ぐふっ……!?」
俺は咄嗟に胸を押さえる。
な、なんて可愛いんだ。あぁもう可愛すぎだろ、マジ尊い……。
これがリアルの尊さなのかと感じていると、薫が耳まで紅く染めプルプルと震えていた。
「お、お兄ちゃん……恥ずかしいよぉっ」
「あっ! また声に出てたか!?」
コクンと頷く薫。
俺は頭に手を当て天を仰ぐ。
またやってしまったぁ……。俺はどうしてこう口に出してしまうのか。
理性で歯止めが利かないくらい薫が可愛すぎるからなのか、そう考えていると薫が涙目になっていた。
……またですか?
「お兄ちゃんのばかぁっ!」
羞恥が限界に達したのか、薫は俺の口を塞ごうと襲い掛かってきた。
俺たちは今椅子に座っている。そんな状況で襲い掛かられたらどうなるか、考えるまでもなく。
「うわっ!?」
俺は薫に押し倒される形で床に倒れた。
後頭部が痛い。
「か、薫退いてくれ……」
もう少しだけ温もりを感じたいと思いながらも、俺は残った理性で薫を押し退け──ようとした。
だがその前に、手に伝わってきたのは異様に柔らかい感触。
指を動かすと──ふにゅ、と僅かに沈む。
嗚呼、神よ……これはやりすぎだと思う。
俺はいつも幸福をくれる神を恨みながら、薫の羞恥に染まった顔を見て覚悟を決めるのであった。
「お兄ちゃんのバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──っ!!」
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