第6話 世界の果ての夜

聖堂を出ると、陽は傾きかけていた。

夕陽が小高い丘の上にある聖堂をまばゆく照らす。

丘から見下ろす街は樹海の隅に沈む、世界の果ての街のよう。

不意に軋み音と共に聖堂の扉がひらき、若い修道女が現れる。まだ少女といった年頃。夕陽のような紅い髪。あなたは明日には街を出ないといけません。今日は教会の小屋に泊めてさしあげます。彼女はそう言った。男は修道女に、いくつか質問した。この街には子供がいない。君のような少女や少年、若者もほとんどいない。どうしてか? 城になにがあるのか? 他の街にはどうやって行くのか?

彼女は答える。子供のいないこと、若者の少ないこと、城がなにか他の街はどこか、そんなことを考えるあなたのような人は、皆、街を出ます。ここにいる人々はそんなことを思い煩うことはありません。あながいずれそうなって街に戻るか、還らぬ人となるかは、わたしにはわかりません。

還らぬ人、という言葉には、いくつもの意味が込められているように、男の中で木霊した。修道女は去り、男は眠りについた。

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