第60話 職業に貴賤なし

 噂や邪推というのは恐ろしいものだ。

 コロナウィルスにおける休業補償の件でホステスが叩かれた。

 なんとも、胸が痛い。

 ホステスは皆、高給取りの脱税者なのだろうか!?(笑)。

 少し実情をお伝えしておこうと思う。


 ホステスは店側と雇用契約を結ばない限り、従業員ではなく、個人事業主だという。

 だが、個人事業主として業務委託契約を結んだことはないし(※その昔、指印の割印を求められたことはある)、税務署に開業届を出した覚えもない。

 仮にホステスが個人事業主なら店側は安上がりだ。

 社会保険に加入させなくてもいいし、福利厚生も必要ない。

 ホステスの報酬は外注費(経費)にあたるので、節税対策にもなる。


 仮にホステスが個人事業主なら業務委託になるので、業務をきちんと遂行できるかどうかが鍵となる。

 キャバクラにおいては、素行よく接客する、指名を取って売上を作る、などが業務に該当するだろう。

 それができなければ、お呼びがかからない=時短要請や欠勤要請やクビ、といった可能性だってある。

 だが、ホステスはタイムカードで勤怠管理されているので従業員だという。

 歩合制ではなく時給制で最低保証があるなら、従業員だという。

 だとすれば、それ相当の保証がなされるべきだと。

 法律家や税理士や当事者、本音や建前によって、解釈のしかたはまちまちだ。

 裁判では、ホステスは従業員か?個人事業主か?が争点となる。


 仮にホステスが個人事業主なら、支給されるのは給料ではなく、報酬だ。

 明細書が、給料明細書か報酬明細書かで自分の“立場”を判断できる(※曖昧にするために明記しない店もある。年度明記もない)。

 交通費の支給はないし、まいど、当然のように徴収される厚生費(ロッカーやトイレなどのレンタル使用料)は雑費のことであり、個人事業主にしか請求できない(※従業員の厚生費は会社負担の非課税)。


 店側はホステスの所得税を、毎月、翌月の十日までに税務署に納付することが義務づけられている。

 店側が取りあつかうホステスの所得税額の算出方法には、俗にいう“ホステス控除”が盛りこまれている。

 理容代や衣装代や交際費などをあらかじめ考慮した“見なし経費“が含まれており、算出方法は下記のとおりだ。


 報酬-(5.000円×月日数)×10.21%=所得税額


 例えば、報酬が20万円で月日数が30日(※出勤日数は不問)だった場合の所得税は5.105円。

 月イチの収入が15万円以下なら非課税になる。

 

 報酬が低い熟キャバ嬢では、不足しないだろうと見なした10~15%の所得税を、店側が前倒しでざっくり徴収するらしい?

 だが、明細書には10%や15%と記載されているだけで“所得税(徴収)”とは明記されていない。


 ある店ある年、支払い方が毎年一月に税務署に提出する支払調書(個人事業主の源泉徴収票)を二月に貰ったが(※支払い方は年間48万円以上の支払いには税務署への提出義務があるが、年間50万円以下の支払い相手には発行義務がないため、請求しないと発行しない店もある)、記載されていた源泉徴収税額は少なく、明細での高額に相当しない。

 ん?んん?んんん?

 eーTaxのシミュレーションにかけると、余分に数万円を支払わなければならない試算になってしまった!

 それでは所得税を二重取りされてしまう?ので、その年は泣く泣く確定申告を諦めた。

 マイナンバーが導入される以前の話だ。

“10%”の謎の項目では0.21%の復興特別所得税が加算されていないため、源泉徴収ではない!と言いのがれできるのか?

 ん?んん?んんん?

 経理の単純ミスなのか?

“悪習”なのか?

 何かの“からくり”なのか?

 どこまでが“合法”でどこからが“違法”なのか?どこに何を訴えたらいいのか?もわからず、モヤモヤして恐怖した。

 

 確定申告における還付金は経費計上分への適用であって(※明細書に顧客管理費((実質、所得税として徴収されているもの))の記載があれば経費に計上することはできる)、当然だが“店にプールされている超過分の所得税”を請求できるはずもない。

 水商売はグレーゾーンだらけの業界だ。

 ガイドラインが整えばそれに越したことはない。

 それでも、多くのキャバ嬢が店を通じて毎月、適正な所得税額を税務署に納付していることは明言しておきたい。







 

 

 

 

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