妄執

 

 ──────

 ──────────


 ──────────────……



「……え、なに? 帰っちゃうの?」


 帰る? 何を言ってる?

 ボクの帰る処はキミのトコロ。

 どこにもいかないよ……ココに居るさ、ずっと。


 「だって……怖いんだもの」


 何も怖くなんかないだろう、ボクがいつでも傍にいるんだから。


「信じてないのね?」


 キミの気持ちは信じてるよ。ボクを愛してやまない……ボクも同じキモチだ。

 こうして他の男を連れ込むのは、ボクの気を引きたいから……。

 

「だから……きっとそういうのじゃないのよ……」


 そう、そんなもんじゃない。

 愛なんて簡単に位置づけられるようなものじゃない。


 ボクたちの存在全部を砕いて、すりつぶして、混ぜ合う……それをしても足りないくらい一つになりたい……。


「笑わないで! だってこのアパート、やけに家賃が安くない? 駅近だし、建物は古いだけど改装してあってすごく綺麗………………」


 ……なんだ、この空間が気に入らないのか?

 ボクもあんまり好きじゃないけど、でもココじゃないとダメなんだ。


 ボクはココにいるよ。

 ココでキミが戻ってくるのをずっと待ってた。

 

 これまでの女たちはどこか違ってた。

 そこそこ慰められたけど……キミとは比べ物にならない。

 

 でも今度こそ、キミ。


 今度こそボクを



 ミ・タ・シ・テ……




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る