その2 そして俺はボロボロになった
「手伝うって何をするんですか」
「上空からこの辺り一帯を見て貰う。地魔法があるなら歪み具合が見えるだろう」
なるほど。
「でも歪みを調べる魔法なんて憶えていませんよ」
「魔法なんて必要なら思い浮かぶものだ。心配するな」
そんな訳で屋上から箒に乗って上空へ。
五月晴れでなかなかいい感じだ。
「どれ位上まで行くんですか」
「まだまだだ。お前の箒も大分ましな奴に変えてやったし、まだまだ平気だろう」
「そりゃ大丈夫ですけれどね」
ちなみに朱莉さんの箒は俺のより一回りでかくていかにもパワフルそうな奴だ。
そんな訳でかなり高い場所まで来た。
「この辺で大丈夫だろう」
箒の高度計は八百メートルを指している。
「さて、下を見て何か感じた事はあるか?」
一見しただけでは単なる航空写真程度……
でも何か俺の魔法感覚が違和感を感じている。
おっ、確かに魔法が思い浮かんだぞ。
『4Dマッピング!』
航空写真に見える下の景色がワイヤフレーム的に変わった。
黒地に縦横の方眼用紙のような白い線が入っているような感じだ。
そしてその方眼用紙は明らかに所々歪んでいる。
歪みの形は円状というか正確には五角形だ。
歪みが強い場所は六カ所。
五角形の頂点と中央。
さらに頂点を結んだ星形の歪みもわかる。
「明らかに何らかの魔法術式だな、五芒星型か」
朱莉さんがそんな事を言った。
「見えるんですか」
「お前が見えるならな。私は知識の魔女だ。人の知識も私のもの」
ジャイアニズム的に知識を保有できる訳か。
かなり邪道だとは思うがこの場合は便利だ。
説明をしなくて済む。
「さて、術式がかかった場所はわかったな。ご苦労だった。部活に戻って良し」
「朱莉さんはどうするんですか」
「取り敢えず学校で今の観察結果を報告した後、実地調査だな。潰しても問題無さそうなら術式を潰す。その辺は術式の専門家もいるから問題無いだろう」
なるほど。
「わかりました。それじゃ部活に戻ります」
「あと今日はこの始末で遅くなるかもしれん。でも飯は食うから取っておいてくれ」
「了解です」
そんな訳で下へと降りる。
正直これからどうするのか興味が無い訳でも無い。
でも俺自身はまだ魔法使いとしては駆け出しもいいところ。
何せ義体がまだ身体になりきっていない状態だ。
ここは大人しく大先輩方のお手並み拝見といこう。
そんな訳で俺は第二講堂へ。
「どうだった?」
「この周りの空間が歪んでいるのを確認しただけ。あとは先生がやるってさ」
あえて細かい事は言わないでおく。
具体的な場所を教えると知佳あたり自分で見に行ってしまいかねないからな。
結局今日はその後特に何事も無く部活も終了。
俺も大人しくスーパーに寄って自宅に帰る。
なお朱莉さんは夜11時頃ご帰宅。
「何か色々面倒な事が起きるから叩き潰すだけじゃ駄目なんだと。面倒なこった」
シャワーを浴びた後とっておいた半額弁当を、
「冷たい、冷え切っている、不味い」
文句を言いながら完食。
「色々むしゃくしゃしたから全部ここで発散するぞ!」
その後、俺がどうなったのかはご想像に任せる。
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