その4 それでもいい

「いいの、私と二人で残って」

「何で」

「また私が蒼生の事を襲うかも知れないわよ。賢者の石はまだ残っているんだから」


 ああ、その事か。

「もし襲いたかったら襲われてもいいな」

「確実に撃退出来る自信があるってこと?」


「そうじゃないな」

 そう、そうじゃないんだ。

「別に彩葉ちゃんなら襲われて賢者の石を取られても別にいいかな」


「そうすると蒼生という存在はいなくなるのよ。それはわかっているわよね」


「勿論」

 それは充分わかっているのだ。

「それでも彩葉ちゃんが必要だと思うなら別にいいさ。今はそんな感じだ」

 変かもしれない。

 でもそれが今の俺の本音だ。


「それならね」

 彩葉ちゃんが俺の胸に手を当てる。

 心臓の反対側やや上。

 賢者の石がある場所だ。


「このまま魔力をかければ炎が出て賢者の石以外を焼き尽くすわ。もうこの状態だとどんな魔法を使っても防御は間に合わない。わかっている?」


「わかっている。多分やらないと思うけれど、やらなければならない程彩葉ちゃんが追い詰められているならそれでもいいと思っている」

 ふっと当てられている手が熱くなる。

 でもそこまでだった。


「今はやる気を無くしただけだからね。まだ狙っているんだから」


「でもアトス先輩相手の時は助けて貰ったしさ。何か俺、彩葉ちゃんには酷い事してしていないのに」

 一回目は服を脱がしかけ、二回目は完全に脱がした上で鑑賞しまくったからな。


「私以外に負けたら嫌だから、それだけよ」

「でもありがとうな。それに今日も楽しかったし」


「どうも調子狂うわね」

 そう言って彩葉ちゃんはお湯に深く浸かり直す。

「でもまあ実際、もう蒼生を襲う気は無いのは認めるわ。何かやる気が無くなっちゃった」


「なら嬉しいな。彩葉ちゃん可愛いしさ」

「本当にそう思う」

「勿論」


「だって実際は私、百八十五歳よ」

「可愛いのに歳は関係無いさ」

「そう……」


 ちょっとだけ無言の時間が続いた後、彩葉ちゃんは再び口を開く。

「でも気持ちって外見の年齢に引っ張られたりするところもあるのかな。何か最近の私、変だなとは思う。蒼生には実際色々されているんだけどさ。脱がされたり裸を全部見られたり」


 その節は本当に申し訳無い。

「色々すまん」


「でもあれは私が襲ったのが原因だしね。それでどう、私の裸を見て」

「綺麗だし可愛かった。冗談じゃ無くずっと目が吸い寄せられた」

 これは本当だ。


「萌花の方が胸もあるし女の子体型だと思うけれど」

「俺は彩葉ちゃんの方が綺麗だし可愛いと思うぞ」

 本音だ。

 まあ俺の趣味趣向のせいなんだけれどさ。


「それにあれだけ色々見たんだからもう魅力は無いんじゃない」

「そんな事は無い。今の水着姿だって綺麗だし可愛いしさ」

「本当に」

「本当に本当」

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