第19話 健全な精神は健全な肉体に

その1 気分はマイケル・ジャクソン

 昼休み。

 いつものように六人で机をくっつけてお昼ご飯。


「だから蒼生のお弁当、作ってあげると言っているのに」

「俺はパンが好きなの」

「蒼生君、もう諦めて知佳と付き合っちゃえば?」

「突き合うなんてだいたーん!アレとペニパンでどっちも攻め?」

「その突き合うじゃない!」


 まあそんな感じの日常の食事風景。

 品が無いのは許して欲しい。

 女子は過半数を超えると一気に品が無くなる模様だ。


 既に俺や喜平君は男子とすら思われていない様子。

 もう俺達も慣れてしまったけれどさ。

 男子校とかにいる奴らがこの状況を知ったらさぞかし幻滅するだろう。

 俺は本来歳を食っているし喜平君は心が女子。

 だからそれほど気にしないけれど。


 買ってきたパン3つを食べ終え、馬鹿話をしている時だった。


「頼もーう」

 なんだなんだ。

 何か時代錯誤な台詞が教室入口からしたぞ。

 見ると朝見た樽と他二人がいる模様。

 うん、ここで女子の話に加わっているよりちょっと運動してきた方がいいかな。

 あんなのが入口を塞いでいると邪魔だしさ。


「ちょっと遊んでくる」

「机は戻しておくよ。でもやり過ぎないでね」

 翠さんがそんな事を言う。

 全く心配する様子も無い。

 まあそんな訳で俺は入口の方へ。


「何か用か」

「招待状を渡して貰おう」

 その件か。


「本当は面倒な事は嫌いだから渡してやっても良かったんだ。ただし最初からきちんと礼儀を通していればだがな。そんな訳で気が変わった。明日の放課後のお誘い、謹んで承ろう」


「もし力尽くでもと言ったら」

「ああ人間の言葉が通じないのだなと思うだけだ。教育の敗北という奴だな。

 なお招待状は制服の内ポケットに入っている。この通り」

 右手で内ポケットからちらりと例の封筒を見せてやった。

 すかさず奪いに来た腕を後退して避ける。


「行儀が悪いな。生まれか育ちか教育の敗北か」

「言わせておけば」

 つかみかかろうとする手をまた後退して避ける。


「鬼さんこちら、甘酒進上!」

 そのまま後退しながら誘ってやる。

 ちなみに走ってはいない。

 マイケル・ジャクソンばりのムーンウォークで後退だ。

 実際は足をそれらしく動かしつつ風魔法で後退しているだけだけれど。


 一方で女子連は本気で走り始めた模様。

「くそっ、変な歩き方なのに無茶苦茶早い」


「変な歩き方は無いだろう。ムーンウォークbyマイケルジャクソン、なんて知らないか」

「何だそれは」

「悲しいな。昔はキングオブポップとまで呼ばれていたのにな」


 ついでに鼻歌でビリージーンを歌いつつ更に後退。

 おっと段差だ。

 華麗にジャンプ。

 ついでに回転して両手を広げてポーズ。

「ポウッ」

 あ、これは違ったか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る