その2 ステロタイプな馬鹿が来た
俺はそういう面倒くさいのは苦手だ。
何せ元軽度引きこもりでニートだからな。
「このお茶会って断る事は出来ないのか」
「断った事が知れたら内部生に襲われると思うわよ」
翠さんが恐ろしい事を言う。
「招待状を貰った事がバレただけでも親衛隊に襲われる可能性があるけれど」
妙な単語が出てきた。
「親衛隊って何だ?」
「桜景学園生徒会親衛隊。まあ生徒会のファンクラブね。でも武闘派組織らしいから気をつけた方がいいよ。案外もう狙われているかもしれないけれど」
「本当かよ」
何か冗談みたいな話だ。
「でもまあ、期日が明日の放課後だから起こるとすればそれまでかな。それに武闘派と言っても女子校だし大丈夫だろ」
「ならいいんだけれどね」
翠さんがそんな不吉な事を言った直後。
「E組の鈴木蒼生は何処だ」
そんな台詞が入口の方からした。
見ると樽のような体型の女子が入口からこっちを見ている。
バッチからすると二年生だ。
「何か用か」
「ちょっとこっちへ来て貰おう」
うん、こいつら碌でもない連中という感じだ。
こいつらに付き合う義理は無い。
「嫌だね」
その一言で済ます。
「くっそー、こっちが下手に出ていると思えば」
「それで下手に出ていると思えるなら教育の失敗だな。小学校からやり直せ」
元の俺と違い、この義体はあの朱莉さん制作で割と戦闘的。
売られた喧嘩は丁寧にお返しするタイプだ。
その容物のおかげで俺までちょっとだけ戦闘的になっている。
まあこんな奴らに丁寧な対応などする必要は無いしさ。
「だいたいそんな態度で言う事を聞いて貰えるという考えがゴミだな。親が見たら嘆くぞ。うちの子はお嬢様学校に入れたはずなのに何でこんなに暴力的な物言いをするようになったのかしらと」
「うぬぬぬ」
「更に言うと、いきなり喧嘩を売るような口調で来たのはそっちだからな。それでも俺の好みのタイプなら一緒に行ってやってもいいんだが、生憎という感じだしな。なおあくまでこれは俺の好みの話だからヘイトでも何でもないぞ」
うーん、この辺からは喧嘩を売っているのは俺だよな。
そう思うけれどさ、俺はこういうタイプとにかく嫌いなのだ。
だからもう止まらない。
「それとも下級生の教室に押しかけて暴力沙汰でも起こすか。そこまで破廉恥ならそれ相応の教育もしてやるけれどな。
とりあえずいきなり喧嘩を売るような態度で来る輩に用は無い。目障りだからさっさと消えろ」
「そもそもこの神聖な桜景学園に男が……」
「その辺の問題は学校当局に言うんだな。共学にしたのは俺じゃない。そんな事もわからんようなら本当に小学校からやり直した方がいいな。むしろ幼稚園か」
ちなみにちょっと魔法も使っている。
風魔法で相手の言葉を弱くして、逆に俺の言葉は増幅させて。
つい今思いついた風魔法の使い方だがなかなか便利だ。
「この、言わせておけば!」
樽体型の女子が俺の方目がけて教室内に駆け込んできた。
こいつ、単純馬鹿だな。
ちょいと風魔法で足をひっかけてやる。
見事に倒れた。
うん、ざまあみろ。
ちょうど授業開始五分前の予鈴が鳴った。
「高木、引き上げるぞ」
「くそ、憶えていろ」
奴らが去って行く。
何かステロタイプな奴だったなあ。
そう思いながら俺は授業の用意をする。
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