第5章 魔法使い俺と謎のプリンセス

第18話 お茶会への招待状

その1 お茶会への招待状

 桜景学園は元々は中高一貫の名門女子校である。

 いかにもという感じの女子校文化も未だ色濃く残っている。

 交わされる挨拶も何割かは「ごきげんよう」という感じだ。

 そしてそんな文化の頂点に高等部生徒会があるらしい。

 生徒会室には名家のご令嬢という感じの女子が陣取り、キャッキャウフフな事を行っているとの事だ。


 勿論同じ学園内にあっても俺とは全く縁の無い世界である。

 大体において外部生は古より続く桜景文化とあまり関係無いのだ。

 その辺は母も祖母も桜景学園出身というような連中に任せておけばいい。

 少なくとも俺はそう思っていた。

 というか、特に意識する事は無かった。

 今日までは。


 朝、登校すると机の上に封筒が乗っていた。

 薄いピンク系のグラデーションがかかった見慣れない封筒である。

「何だろう、これは」


「私が来る前から置いてあったよ」

 知佳の仕業でも無い模様。


「開けてみるか」

 ラブレターならもっと衆目につかないところにあるだろう。

 でもだとしたらコレは何なのだ。


 開いてみると封筒内には一枚のカードが入っていた。

 封筒と同じ薄いピンク色だ。

『拝啓 皆様方におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。さて、恒例となりました桜景会を下記のとおり催しますことをご案内申し上げます。

 お茶会は、桜景学園高等部生徒会室で来る四月二五日木曜日、一六時から一七時まで催します。

 ご多忙中とは存じますが是非ともお越しくださいますようお願い申し上げます。略儀ながら書中をもちましてご案内を申し上げます』


 何だこれは。

 どう見てもお茶会のお誘いだが何故こんなものが俺の席に。

 なお鈴木蒼生様と宛名が書いてあるので俺宛に間違いは無さそうだ。


「これって何だかわかるか」

 知佳と翠さんに聞いてみる。


「うーん、何だと言われてもお茶会のお誘いだよね」

 知佳は俺と同じ程度にしかわからない模様。

 でも翠さんは何か知っているらしい。


「取り敢えずその封筒、カバンの中に隠して」

 変な事を言うなと思ったが、取り敢えず言われたとおりにする。


「何でだ」

「今のはここ桜景学園高等部に長年続く生徒会主催お茶会への案内状よ」

「ああ、確かにお茶会って書いてあったな」

 でもそれを何故隠した方がいいのだろう。


「ここ桜景学園は歴史の古い女子校だからね。昔からの風習とか行事とかが色々残っているの。桜景会とも呼ばれる生徒会主催のお茶会もそう。昔は名家の子女同士の社交の場の一つでもあったりしたのよ。


 そして生徒にも内部的な階層構造ヒエラルキーみたいなものがあって、その頂点が生徒会であり生徒会長なの。生徒会役員は生徒五人以上の推薦人を立て、その上で選挙で選ばれるんだけれどね。基本名家の出身で見目麗しく学業も優秀という感じで内部生のアイドルみたいな存在かな。私達みたいな外部生にはあまり関係無いんだけれどね。


 だからその生徒会が主催するお茶会に招かれるは大変に名誉な事であるとされているの。つまりその招待状は内部生にとって憧れへの招待状みたいなものよ。

 普通は二年生以上で学業なりスポーツなり何らかの実績を残した人が招待されるんだけれどね。外部生で一年生でしかも男子の蒼生が受け取ったと知ったら怒り狂う内部生も結構いるんじゃないかしら。

 だから当日までその招待状は誰にも見せない方がいい。私はそう思うわ」


 なるほど。

「なかなか面倒な文化があるんだな、この学校も」

「歴史が古いお嬢様学校だからね、まあ仕方無い面もあるかな」

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