その4 悪出戻、もとい静枝さん
「静枝が主に使う魔法は人心操作。人に暗示を植え付けて使役するのが主な戦法です。あとは遠距離攻撃用に風魔法も持ってはいます。でも単独ではそんなに戦闘が得意な魔法使いではありません。
だから妨害が入らない限り、鈴木君の方が強いと思います」
「でも俺は攻撃専用の魔法なんてほとんど無いですよ」
そうなのだ。
俺自身の魔法は基本脱がすだけ。
何でそんな魔法ばかり身についたかはわからない。
きっと俺に魔力を与えた朱莉さんや知佳なんかの影響に違いない。
そう俺は思っている。
「大丈夫です。今日なら鈴木君は静枝に勝てる筈です。ただ危険だと思ったら素直に逃げて下さい。その辺の勘は信じた方がいいようです。さて」
渡り廊下を歩き始めたところで左右から怒声が聞こえた。
硬式テニス部とソフトボール部の皆さんが左右から俺達を襲ってくる。
「心配無用です。リライト!」
ふっと怒声が止む。
襲おうと走ってきた皆さんの足が止まった。
何やら不思議そうな顔であたりを見回している。
「お疲れ様です」
貫井先輩はそう双方に挨拶してそのまま歩いていく。
「私の魔法は知識の魔法。静枝に加えられた暗示を消すのは簡単です。このまま静枝を捕まえますよ」
疑問がある。
「空を飛んで逃げたりはしませんか」
「追いかけるだけです。でもそうならないと予測しています」
何故だろう。
「種明かしは後で。リライト!」
渡り廊下前方から走ってきた生徒が急に速度を落として辺りを見回す。
「ごきげんよう」
貫井先輩は彼女にそう挨拶して歩き続ける。
本館に入り更に数回。
階段上に潜んでいた生徒や柱の陰に潜んでいた生徒を正気に戻した後。
四階一番奥の教室の扉を先輩は開けた。
小柄な女子生徒が教卓にちょこんと腰掛け、こっちを睨んでいる。
目つきがちょっと怖いが体型そのものは俺好み。
顔も多分可愛い方だと思う。
「来たな、貫井」
彼女の台詞に貫井先輩はため息をつく。
「その身体に戻ったのなら
「友達ぶりおって。私を刑務所へ墜としたのはお前のくせに」
「下手な魔女に玩具にされるよりはと判断しました」
どうも
しかも良く知っているというだけじゃ無い模様。
「私は忘れないぞ。男の義体に移されて無力化され、男どもと雑居の上狭い世界に閉じ込められた日々を。あの屈辱的な無力感を」
「それでも数年で何事も無く戻ってこれる筈でした。魔女としての罪も消える筈でった。数百年を生きる魔女にとっては大した事の無い時間の筈です。それなのに」
「魔女の本質は自由と奔放よ。さあ
貫井先輩はまたため息をついた。
「悲しいです。静枝の見ている
「どういう事だ!」
「静枝も操られているんです。静枝が操っていた先程の生徒達のように」
「何だと!」
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