第16話 狙われた魔法使い

その1 下校途中に

「何で襲撃なんてされたんだろうね」

「うーん、わからないな」

 そんな訳で三人で駅まで歩いているところだ。


「破滅に導く魔女どもよ、なんて言っているからにはうちの部が魔女の部だって事を知っている相手だよね、敵は」

「そうするとうちの学校の関係者かな」

「そうとも限らないわね。知識魔法使えばすぐにわかるし」

 確かにそうだな。


「うちの学校の他の魔女系団体も襲われているのかな」

「聞いてみた方がいいわね」

 翠さんがスマホを取り出す。

 歩きながら何か打ち込んでいる模様。


 駅前の交差点にさしかかる。

 他の学校も下校時刻。

 ちょうど夕食の買い物時間ともあわさり、そこそこ人が多い状態だ。

「亜紀乃や夏美、美夏のところは特に何も起きていないみたいね」

 翠さんがスマホを見てそんな事を言った時だった。


 ふっと違う空気が周りを包んだような気がした。

 この感覚は憶えがある。

 魔法戦闘に入る前のあの感じだ。


「まずいわ、ゆっくり逃げましょう」

 翠さんの小さい声。

 そう、今のは何らかの魔法が起動された気配だ。

 俺も知佳も頷いてゆっくり後方へと下がる。


 不意にあたりの視線が俺達に集中したような気がした。

 見える範囲の人々が振り返るなり視線を上げるなりしてこっちを睨んでいる。


「ある程度引き離したら箒で逃げるよ」

 人々が動き出したのは知佳のその台詞が終わると同時だった。


「スロウモーション!」

 翠さんが走り始めると同時に魔法をかける。

 こちらへ襲いかかる人々の足取りがゆっくりになっていく。

 俺達は走りながら箒を取り出した。

 またがると同時に一気に上昇する。


「何なんだろうね、いったい」

「わからない。一般人を巻き込むのはルール違反なのに」

 周辺の建物よりちょっとだけ高いところで様子を伺う。


「今のは完全に私達を標的にしていたようね。もう魔法が解除されたわ」

 人の動きが元に戻っている。


「何が目的なんだろうな、いったい」

「蒼生の賢者の石が目的にしてはちょっと変だよね」

「一般人を巻き込んだら賢者の石を奪取するどころではなくなるものね。そう言えば蒼生の賢者の石は……あと二週間でえっち解禁か」


 知佳のその台詞に微妙に生々しさを感じてしまった。

 いかんいかん。


「いずれにせよ次の一手があると思うわ。空中に逃げる位は予想出来るでしょうし」

 翠さんがとっても不吉な事を言う。


「どうだろ、この状態を襲うなら魔女として姿を現さないと無理だからね」

 知佳は逆に楽観派。


「まあここでただ待つも何だし、取り敢えず線路沿いに向こうの駅まで行こうか」

「そうだね」

 そんな訳で線路の上空をいつもの駅まで箒で飛行。

 なお俺が一番先頭だ。

 何せ俺のマシン鈍足だから。


 それでもまあ十分も飛べばいつもの駅の真上。

「結局何も無かったね」

「そうね、でもその方がいいじゃない」

 という事でここで解散になる。

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