その3 第二講堂襲撃

 月曜日の放課後。

 毎度お馴染み第二講堂は今日も混沌カオスが支配している。

 今日もピアノとギターの音が響きレオタード姿が新体操の練習をしその仲で油絵を描いたりパソコンに向かったり。

 まあ俺達はもう慣れてしまったのだけれど。


 俺は現在、翠さんに勧められた名作エロゲをプレイ中。

 最初からもうハッピーエンドが望めなさそうな展開。

 ただ登場人物が百歳以上だが十代前半の見かけのロリ少女。

 なので不穏な感覚のまま片イヤホンでゲームを進めていた。

 うん、これきっと泣きゲーだ。

 シ●ンちゃーん!

 なんてやっていた時だ。


 ドン!

 第二体育館の扉が乱暴に開けられる。

 何だと思って俺達は振り向く。

 白衣に白マスク姿の女子生徒三人が何か入った丸底フラスコを持って立っている。

「この世を破滅に導く魔女どもよ、滅びるがいい!」

 丸底フラスコ3本が講堂内に投げ込まれた。


 何だあれは。

 事の成り行きについていけず俺がぼんやりそう思った時だった。


「アイスフリーズ! ストップ! スリープ!」

 貫井先輩の呪文が連続で響く。

 投げられたフラスコが空中で静止。

 白衣姿の女子生徒三人はふらっと倒れた。


「ブリング!」

 フラスコ3つは貫井先輩の手元にすっと引き寄せられる。


「元町さん、このフラスコ調べるのお願いしていい。そこの三人は内藤さんに調べて欲しいけれど、その前に魔法紋が採れるか確認します」

 貫井先輩はフラスコを机の上に置くと、立ち上がって倒れた三人の方へ。

 途中で白いコピー用紙を手に取り、女子生徒三人のうち一人に近づいて紙を翳す。

 紙に黒い円形の紋章のような図柄が浮かび上がった。


「私はこの件を適当な先生に届けてくるわ。内藤さんはこの三人を調べて。先生に確認して貰うから解除はしなくていいわ。他の皆さんは帰る準備。お願いね」

 ささっと指示して講堂の外へ。

 仕方無いので俺もゲームをセーブして帰る準備を始める。


「貫井先輩、何というか流石だね」

 知佳の感想に俺も頷く。

「ああ。何が起きているんだか把握する前に終わっていた」

「こんな状況にも慣れている感じね」


 翠さんのその台詞に近くの先輩が答えてくれる。

「貫井先輩は特別ね。強力な知識魔法か何かを持っているらしいの。短期間なら予知も出来るみたいだし」


 そう言えばダルタニャン先輩の時も事前にわかっていたみたいだしな。

 あの時は……と思い出しかけて慌てて思考を止める。

 あれは黒歴史だ。

 今は別の事を考えよう。


「フラスコの二つはガソリン入りで、一つは発火材ね。割れたら相当な面積を炎が包むことになったわ」

 内藤先輩が分析を終えた模様。


「大丈夫なの」

「魔法で中身の凍結かけているから大丈夫。先生に確認して貰った後、分解処分ね」

 なるほど。


 そして貫井先輩が戻ってくる。

 おいおい、連れてきたのは朱莉さんもとい鈴木先生かよ!

 でも確かに魔女だし適任ではあるのか。


「なるほど、こいつらが火炎瓶投げて襲撃してきた訳か。火炎瓶はそこの三本だな」

「はい」


 鈴木先生は更に倒れた三人を一瞥する。

「確かに強力な魔法暗示がかかっている。よし、この三人の処理は私がしよう。貫井と内藤、元町を除いて他は下校だ。なおこの件については魔女以外には話さないこと。まあ言わなくてもそうしてくれるとは思うけれどな。

 あと下校時も充分に注意してくれ。できれば同じ方向の生徒は一緒に帰る等すること。いいな」

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