第4章 魔法使い俺と府中刑務所の元囚人

第15話 悪の魔法使いの影

その1 黒歴史入りが決定しました

 水魔法を手に入れておいて幸いだった。

 治療魔法が豊富だから。

 取り敢えず必死で尻穴に憶え立ての治療魔法を連発する。

 何とか立てるようになったので急いで服一式を回収。


「うん、なかなか新鮮でよかったよ。男の尻穴処女相手は久しぶりだな。何ならまたもう一戦、や・ら・な・い・か」

「いえ、もう結構だ」


 勘弁してくれ。

 いくら俺好みの美少女でも尻穴攻撃は御免だ。


「尊いものを拝見させていただきました。ありがたやありがたや」

 翠さんがダルタニャン先輩を拝んでいる。

「まあ観ていて楽しかったし前のモノでなければまあいいか」

 知佳までそんな事を。


「やめてくれ、もう沢山だ」

「何なら今度は別の銃を使って犯してもヤってもいいぞ。ウッズマンでもM84でもデリンジャーでも」

 ダルタニャン先輩、頼むから冗談でもそんな事言わないでくれ。

 しかも双頭ディルドを何種類も出しながらなんて。

 尻穴がキュッと縮む思いだ。


「まあそれはともかく、これで桜景学園百合騎士団とは決着がついたと思ってくれ。もうこれ以上うちの騎士団から君に敵対行為を働く事は無いと約束しよう。

 もちろん君が不服なら再戦するのもやぶさかではない。どうだい」


「いえ、これで充分です」

 もうあんなキモ悪くて痛いのは御免だ。


「まあそう言うな。何度もやるとそのうち快感になってくるらしいぞ」

「遠慮します!」

「つれないなあ」

 ダルタニャン先輩は肩をすくめて、そして話を続ける。

「まあそれはいいとして一つ忠告だ。最近、この街の周辺に悪い魔法使いが出るらしい。手当たり次第に交通事故を起こしたり、悪夢魔法を使って付近一帯に負の精神状態を巻き起こしたり。

 最近は不用意な魔法使いを操って事件を起こさせたりしてもいるようだ。先生達や古い魔女達もパトロールを強化しているそうだが、君達も念の為十分注意してくれたまえ」


 なに!

 思い切り思い当たる事がある。

「なら俺が死んだ事故も同じ魔法使いの可能性があるのか」


「その通りだ。三月十三日金曜日午後七時十五分発生の交差点内死亡事故の原因は奴本人。事故車の運転手に介入してアクセルとブレーク操作を狂わせた」

 ダルタニャン先輩は頷く。


「既に犯人の魔法紋は取られている。事案のほとんどが同一の魔法使いの仕業である事も判明している。でも普通ならすぐに発見されるはずの犯人がなかなか捕まらない。おそらくはかなりの実力を持った魔法使いなのだろう。

 だから勝負になったとしても決して受けるな。下手をすれば奴の魔法で操られて悪事の下働きをさせられかねない。だから奴本人の措置は古くて実力のある魔法使いに任せたほうがいい」


「もし運悪く見つけたら」

「全力で逃げろ。奴も他の魔法使いに見つかりたくない。だから恐らく逃げ切れる」


 なるほどな。

 ちなみに俺は自分の手で捕まえてやろうなんて面倒な事は考えていない。

 正直なところ恨みもほとんど無かったりする。

 あの頃の俺はただ生きているだけだったからな。

 どう考えても今の方が遙かに楽しい。

 知佳は妄想だだ漏れ以外は可愛くていい奴だし、翠さんもロリ的な好みとしては外れているが友人としては悪くない奴だ。

 朱莉さんの性的搾取とか問題も無い訳ではないけれどな。


「でもそう言われると私達で捕まえたくならない?」

 知佳が物騒な事を言う。


「ならない!君子危うきに近寄らず」

「その方が無難ね」

 翠さんは真っ当だ。


「そういう事だな。それでは私はここで失礼しよう」

 ダルタニャン先輩はそう言うと姿をくらます。


「瞬間移動魔法か」

 翠さんがため息をついた。

「あんな魔法も使えるようじゃ勝ち目は無かったかな、やっぱり」


 うん、俺もそう思う。

 取り敢えず今日あった事は忘れたい。

 あとここにいる全員にも忘れてもらいたい。

 俺も含めて。

 この経験は俺の汚点だ。

 本当に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る