第13話 最強の騎士団銃士

その1 不安な下校時刻

 やられた。

 ちょっと可愛い系の絵柄に騙された。

 思わぬ鬱展開にもう俺の心はボロボロだ。

 それでも一応礼を言って本を返す。

 彼女が『してやったり』という感じでにやりとしたのを確認した。

 さては確信犯だな、貴様。


 そんな訳で本日は気分ダークで帰り準備。

 そしてふと気づく。

「今日は貫井先輩、気をつけるように言いませんね」

 このところ毎日注意してくれていたのに。

 という事は今日は安全なのかな。

 少しだけ心が明るくなった。


 でも貫井先輩は肩をすくめて、更にため息をつく。

 何だ、どういう事だ。

「避けられない障害というのもこの世の中にあるのよ。いわゆる災害に近いかな」


 ちょっと待った!

「どういう事ですか」

「大丈夫、死にはしないから」

 何か凄く不吉な感じだ。


「私達で固めて帰った方がいいかな。それとも先生が帰るまで待った方がいいかな」

 知佳が有り難い事をいってくれる。

 でも貫井先輩はもう一度ため息をついた。

「避けられないから災害なのよ。でもまあ悪い事ばかりじゃないかな。ごめん、これ以上はきっと言わない方がいいと思う。言ってもどうにもならないから」


 うわあ。

 先輩やめてくれ。

 聞かなければよかった。


「でも一応私と翠と一緒に帰ろう。ひょっとしたらどうにかなるかもしれないし」

「でもそれで二人が巻き添えで怪我とかしたら嫌だな」

「二人は大丈夫だから心配しなくていいわ」

 その辺は明快に貫井先輩は言い切る。

「何かあるのはどんな場合であろうと鈴木君だけ」

 そう言いきらないでくれ。


「でも一応、三人で注意して帰ろう」

 そう言ってくれる知佳がとってもありがたい。


「お礼は大丈夫になった後の一発でいいから」

 前言微妙に取り消し。


「私も一緒だし、取り敢えずできる限りのことはしましょう」

 翠さんもそう言ってくれる。

 うるうる。

 麗しき友情だ。


「それじゃ失礼します」

「お疲れ様。頑張ってね」

 何を頑張ればいいのだろう。

 そう思いつつ俺達は第二講堂を後にする。


「今日は三人で箒で飛んで帰らない?飛び立つ事が出来れば歩いて帰るより安全だと思う。蒼生は自分の箒じゃなくて私の後で。

 翠は速いほうのマシンも持っているよね」

「ええ。今日の帰りだけならちゃんと飛んでくれると思うわ」


 何だ、この前の上品な箒だけじゃないのか。

 そう思いながら学校の第二駐車場付近まで歩いて移動。

 付近に人影は今のところ無い。


「それじゃマシンを出すよ」

 知佳は前にも見た赤い速そうなマシン

 翠さんの今回のマシンは白いフルカウルに赤と緑の線が入った小柄だけれどいかにも速そうな箒だ。

「db-1です。ちょっと速すぎるのと熱がこもりやすいのとであまり乗らないのですけれど」


 いいなあ、二台持ちか。

「翠はイタリアしゃ、好きだよね」

「母の好みです。どちらかというと」

 海外製かよ。

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