その2 幻聴が聞こえる
「あのー忘れ物ですよー」
ふとそんな台詞に振り向いてしまう。
「なに!」
気づくと知佳と翠さんがいつの間にかいなくなっている。
そして後方で困った顔の自称アトス先輩が立っていた。
歩いている姿勢で固まった知佳と翠さんとともに。
「そんな酷いじゃ無いですか。こっちはまだ挨拶の途中でしたのにスタスタ先に行ってしまうなんて。
だからお二人にはここで立ち止まって頂きました。お話し合いが終われば元の状態にお戻し致します」
まずい。
二人による援護が期待できないという訳か。
「それではもう一度最初からご挨拶を。私は三年A組の
鈴木君には大変申し訳ないのですが、貴方を倒して賢者の石を頂きに参りました」
まずい。
まずすぎる。
この場合はどうすればいいんだ!
ちょっと考えたがいい手が思いつかない。
何せ二人を事実上人質にとられているのだ。
でもちょっと抵抗してみよう。
「そこを何とか穏便に。このまま二人を帰して私も無事解放という訳にはいかないでしょうか」
「申し訳ありません。出来れば私もそうしたいのですけれど、アラミスもポントスも倒されてしまった以上、私が貴方を倒さないことには騎士団員が納得しないと言われまして」
「それを何とか」
「申し訳ありません」
「何なら粗品を後日お送り致しますから」
「騎士団員は賄賂は受け取れないのですわ、残念ながら」
本当に申し訳なさそうな顔でアトス先輩は言う。
「そんな訳でそれでは戦いを始めさせて頂きます」
くそう。
こうなったら仕方無い。
先手必勝に作戦を切り替えだ。
「
脱衣の嵐がアトス先輩を襲う!
しかし。
「
巨大な水の壁が嵐の行く手を遮った。
嵐はそのまま水を巻き込み、そして勢いを一気に失って消えて行く。
「ごめんなさい。これくらいなら防げるんです、私」
なら次は!
「
「
俺の水魔法も水の壁に阻まれた。
「これも同じ水魔法で対抗できるんですう。すみません」
まずすぎる!
残った魔法は
どちらも敵を倒すための魔法じゃ無い。
もう二人を置いて逃げるしか無いか。
そう覚悟を決めた時だった。
『もう何をやっているのよ。私を倒したくせに情けないわね』
魔法の声が聞こえた。
俺の知っている声だ。
1年E組最強の美少女(俺視点)で魅惑のロリババア、彩葉ちゃんだ。
これが死ぬ前の走馬灯とか幻聴という奴か。
幻聴であっても最後に彩葉ちゃんの声が聞こえてよかった。
出来れば彩葉ちゃんとヤれれば最高だったのだけれども。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます