その2 百合騎士団の三銃士
「先手必勝!」
知佳がふっと右手を振り上げる。
強力な風が一気にアラミス先輩を襲った。
でも風はアラミス先輩の前方3メートルのところでふっと消える。
「私は元々風の魔女。だから風魔法を相殺するなど訳も無いわ」
「なら連続フリーズ!」
ふっとアラミス先輩が目を瞑ったかに見えた。
だが。
「解除!」
「解除!」
「解除!」
「解除!」
「解除!」
解除の声が連続して起こる。
「そう、連続魔法と言えども場所が離れていれば同時にかけるのは無理。だから誰かの解除魔法で復帰できる訳よ。
なお今回は私以外の五人でこの場所を閉鎖中。同時に四人倒さない限り、箒で跳ぶことはおろか階段から逃げるなんてのも無理よ」
なかなか言葉の内容は笑えない。
「ごめん、ちょっと手が思いつかないかも」
知佳がそんな事を言う。
「なら知佳だけでも逃げろ。お前一人なら何とかなるだろ」
「やだ!」
知佳はそう言うけれど。
「さあ、潔く諦めたらどうですか。でも私にも慈悲が無い訳でも無い。一分以内に『萌花様ごめんなさい。貴方は本当に魅力的です』。そう言って萌花に向かって土下座したら、そっちの女の子の方だけは助けてやってもいいわ」
「駄目だよ!」
知佳はそう言うけれど。
「さて、それじゃ一分数えるとしましょう。五十九、五十八……」
『運を天に任せるような手段だけれど、私にはもうこれ位しか方法が浮かばない』
知佳の声じゃない声が心の中に響く。
「知佳、無茶するな」
『無茶はしないよ。蒼生の眠っている魔力に賭けてみる。蒼生の魔力はそろそろ目覚め始めてもいい頃だよ。だから杖を貸してあげる。右手に持って』
知佳が俺に杖を渡す。
「ははは、何をする気だ! 四十九、四十八……」
俺は杖に思い切り集中してみる。
「魔法なんて出ないぞ、それに出し方も知らないし」
『魔法は使える状態なら必要に応じて心の中に自然に思い浮かぶんだよ。だから自分の力を信じて。そしてこれはだめ押し!』
知佳が俺の首に腕を回した。
一瞬後、俺の唇をやわらかい感触が襲う。
近づいたからか感じる髪の香り。
そして唇から流れてくる何かの力。
その力は俺の身体を流れていき、心臓に近い位置にある何かと共鳴する。
『これで私の今の魔力を蒼生に注入したよ。さあ、魅せてみて、蒼生の力を』
そう、伝わった。
力を失った知佳を左手で抱える。
大丈夫、魔力を全部吸い取った訳じゃ無い。
ただぎりぎりまで魔力を俺に与えたせいで意識を失っただけだ。
さあ、俺は知佳の期待に応えよう。
今の知佳からの魔力で誕生した俺の新しい力。
風の魔法使いである知佳の力で誕生した新しい風の魔法を。
『風魔法、
俺を中心に竜巻が発生する。
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