その2 愛が生まれるのを待ってます

 職員事務棟の裏に無事到着。

ここは一階に窓が少なく、植物の植え込みもある程度ある。

 他から見られにくい場所だ。

 愛の告白にはもってこい。

 なお他に邪魔者等は見当たらない。


 あ、事前に鏡を見て髪型等を調えてくれば良かったかな。

 でもまあこの義体はなかなかに見かけはいい。

 身長がちょい低めなのが唯一の欠点なくらいだ。

 それでも彩葉ちゃんよりは大分高いし問題無いだろう。

 彩葉ちゃんは成長も遅めだし身長も低いからな。

 顔も可愛いし。

 それは関係無いか。

 いや大ありだ。

 俺にとってはな!


 そんな訳でスマホを見ながら彼女を待つ。

 ニュースサイトを軽く読んだくらいの時間の後。

 こちらに向かってくる女子の姿が俺の視界に入った。

 でもまだ俺はスマホから目を離さない。

 がっついているように見られたくないからな。


 あくまでスマートに、それが第一だ。

「鈴木君、待った?」

「いいや、今来たところさ」


 スマホを見ながらで今来たはおかしいって。

 何分待っても今来たところ。

 それがデート現場における紳士の正しい態度だ。


「それで話っているのは何?」

「実はね、私、貴方の身体からだが欲しいの」


 何だって!

 いきなり性愛の告白か。

 勿論俺は大歓迎だぞ!

 いざ行かん気持ちいい世界の楽園へ。


 でもラブホは制服では入れないよな。

 カラオケボックスは見つかると酷い目に遭うらしいし。

 とりあえず学校の目立たないところでこっそり触り愛かな。

 それもまた美味しいかも。


「だからね」

 ふっと何か空気が変わった気がした。

 でもまあこの際細かい事は気にしない。 


「あなたの義体の中の、賢者の石を頂戴!」

 なん・だと!


「彩葉ちゃんも魔女だったのか!」

 思わず彩葉ちゃんと言ってしまってしまったと思う。

 まだそれほど仲良くなっていないからここは美園さんと呼ぶべきだった。

 ちょっと反省。


「ええ、今年で百八十五歳になるわ。でもこの身体でいられるのはせいぜいあと三十年というところ。だから賢者の石を頂きに来たの」


 なんと、彩葉ちゃんも敵だったか。

 でもその前に俺は確かめるべき事がある。


「ならその身体は魔法でその外見にしているのか」

「身体は別に見かけもこのままよ。成長停止の魔法をかけているから」


 何と。

 そういう事は。

「ロリババアだったのか、美園さんは」


 今度はちゃんと美園さんと言ったぞ。

 偉い、俺!

 自分で自分を褒めてやりたい。

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