閑話 貫井先輩の魔女社会入門
おまけ 貫井先輩の魔女講座その1 魔女社会の基礎
「一般人は全く知らないけれどね。魔女や魔法使いという存在は世の中に結構いるのですわ」
放課後の第二講堂。
俺の目の前には典型的優等生型美少女こと、創造制作愛好会部長で三年A組の
俺があまりに魔女社会について知らないので教えてくれているところだ。
「大体どれ位いるものなんだすか」
「日本の都会だとねそうね、百人に一人はいるかな。この学校のように固まっているところもあるけれどね。特に学校とか会社なんかはある程度仲間の人数がいた方が楽だから。この愛好会のように自由に出来る場所も作れるしね。
この学校だと、例えば三年生三百人のうち五十人は魔女よ。先生方に至っては半分は魔女や魔法使い」
そうなのか。
「特に日本の都会には魔女が多いわね。あの頭固くて残酷な一神教の悪影響を嫌って日本に移住してきた魔法使いも多いし。世界の人口で言うと概ね0.01%、一万人に一人と言われている。昔暇な魔女が統計を取ったデータらしいけれどね。
あと男女比で言うと一対一〇位かな、やっぱり女性が圧倒的に多いわ」
そんなにいるのか。
全然知らなかったぞ。
「一般人に比べて寿命も長いしね。義体を使わなくても二百年くらいは普通に生きるし、義体を使って身体を更新すれば事実上寿命は無限だしね。蒼生君の義体を作った鈴木先生もかなり古い魔女の一人よ。初期の魔女狩りで欧州文化圏が嫌いになって日本に来たと言っていたから」
朱莉さんについてはまあそんな気はしていたんだ。
でも本人にその辺を突っ込むと酷い目に遭いそうだから止めておこう。
「それで社会生活上、注意することはありませんか」
気になるので聞いておく。
何せ一昨日には魔女に襲われたのだ。
「人間相手の場合は基本法律遵守ね。勿論人間の知覚できない範囲で魔法を使うのは自由だけれど。あと魔法使い同士の場合は基本法律も何も無いわ。何をしようと一向に構わない。でもね、実際に何でもしていいかというとそうでもないの」
どういう事だろう。
「魔女は魔女なりにお互いを監視しているし、知識を司る魔法もあるからね。だから隠し事はまず出来ない。そしてもしも危険な魔女とか魔法使いとか判断されたら、それこそ魔女社会全体が敵になる。厳密には敵にしても何をしても構わない存在になってしまう訳。そうなると悲惨よ。
何せ魔女や魔法使いには本来モラルとかそういうものは一切無い。だからまあ、口には出せない酷い目に遭うのはまあ間違いないわけ。魔法を奪われたりする位はまだましな方よ。身動きできない状態にしたまま生かしておいたりなんてのも序の口。何せ長く生きている魔法使いや魔女も多いからね、それこそ私達が想像も出来ないような愉しみ方でいたぶるなんて事もされたりする。
だからまあ、人間の法律とかモラルとかは守った方が無難。もし他の魔法使いと戦わなければならなくなった場合は正々堂々と。その辺は心がけてね。まあ世界最強の魔法使いになって、全世界を敵にしても構わないというなら別にいいけれど」
なるほど。
「他には、例えば魔法使いである事を一般人に教えてはいけないとかそういうのは無いんですか」
「無いわよ」
そうなのか。
「信頼できる相手には話したいというのは人情だしね。それに万が一、魔法使いの存在を知って世間的に公にしようとする馬鹿がいたとしてもね、そんなの魔法でどうにでも出来るから」
なるほど。
「だからまずは人間として正しくというのに注意する事ね。魔法を使えるのにいい気になって色々やらかすと、そのうち自分が本当に
まあ鈴木君は当分その辺は気にしないでいいと思うけれどね。まずは降りかかってくる火の粉を払う事かな。義体の中の賢者の石が分離不可能な状態になるまでの間、頑張ってね」
そこで率直な疑問。
「俺を襲うのは有りなんですか」
「ええ、勿論正々堂々と戦って奪い取るならばという事だけれども」
貫井先輩はあっさりそう言って頷く。
「でも普段は学校の先生や私達、それに知佳ちゃんや翠ちゃんがちゃんと見ているしね。ああ見えて知佳ちゃんも翠ちゃんもとっても強力な魔女よ。年齢通りの若さだけれど百数年生きてて義体ひとつ作れないような魔法使いではそう簡単に勝てる相手じゃない。それに家はそれこそ最強クラスの魔女、鈴木先生の巣だしね」
そこで更に疑問が一つ。
「何で知佳とかはあの年齢なのにそんなに強力なんですか」
「簡単よ。魔女の魔力は想像力と比例するの。
だからここの会の活動はそれぞれの想像力を鍛えて魔力を向上させるのを目的にしている。でもあの二人レベルだとそんな活動もあまり必要ないかな。既に人一倍想像力が豊かかつ強力みたいだし」
なるほど。
知佳の妄想力はとんでもないし、翠さんも怪しい気配がぷんぷんしているしな。
俺は深く深く納得した。
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