その2 ポリコレ万歳
着替えてもすぐに教室に帰るとまずい。
女子の方が着替えが遅いのだ。
しかも次は授業では無く放課後。
絶対くっ喋りながらのんびり着替えている。
だから最低ここで五分は時間を取る。
その待機時間だった。
「鈴木君、僕の事を変だと思っているよね」
切り出したのは喜平君の方だった。
「性格だとかは人それだし得意不得意もあるから特に俺は気にしないぞ。ただ今年一年間は間違いなく組まされるからそれはよろしくな」
俺の百パーセント本音だ。
更に理由も追加するとこうだ。
『どうせ男は気にしないから心配するな。俺が気になるのはロリ気味の女子だけだ』
範囲で言うと彩葉ちゃんはストライクゾーンど真ん中ほんの少し高め。
知佳はストライクゾーンかなり外角きわどいところ。
朱莉さんはボールというより暴投もしくは乱闘という感じ。
翠さんは監督かコーチか主審で知佳の抑え役だ。
「そうだからこそ、言っておいた方がいいと思って」
何だろう。
何か真剣な感じだが。
俺は男は特に何も気にしないのだが、まあ同じクラスのよしみだ。
「何だ、言いにくいなら言わなくてもいいぞ」
一応聞いてやろう。
「実は僕は、性同一性障害なんだ」
何かすっと入ってこない単語が通り過ぎた。
何だって。
茶化したいが適切な単語と態度が思い浮かばない。
「鈴木君は聞いたことがある?性同一障害って」
その単語は俺には関係無いが聞いた事が無いわけでもない。
「自身の認識している性別と身体の性別が違う症状だろ」
取り敢えず多分正確で無難な返しをしておく。
「そうなんだ。だから男子に触られたりするとつい変な反応をしてしまうんだ。わかっているけれどさ、治らない」
「性同一性障害は病気じゃ無いと聞いたけれどな。だから治すという概念はおかしいだろ」
なお俺はこの辺は完全に知識と表向きの言葉で言っている。
何せ自分にあまりに関係無いと思っていた話なのだ。
ただだからといって気持ち悪いとか反応するのは申し訳無い。
そんなんじゃロリコンやヲタクを気持ち悪いと言っているバカフェミと同等だ。
ここは元ヲタクにしてロリコンにして元変態紳士として
勿論俺を襲ってきたり等の実害が無ければだけれども。
「ありがとう。流石優秀な学校の高校生だな。結構中学生までは男女と言っていじめる奴がいたんだ。まああんまり酷くなったんで、中心人物数名にそれぞれ個人的指導をしたけれどさ。そうしたら今度はぼっちになってしまったんだ。あいつ怖いと言われて」
うーん、何か恐ろしい事が省略されているような気がするぞ。
俺には関係無いから問題無しだけれど。
「この学校だと元女子高だし馬鹿も少なそうだしさ。それで今までと違って楽な高校生活を送れると思ったんだけれどね。実際ここに来て正解だった。女の子ばかりだから色々な事を気にしないで済むしさ。
ただ唯一の男子の君だけはちょっと不安だったんだ。話をしようにも同じくラスなのになかなか機会が無いし、男子と話すのはやっぱりちょっと怖いしね。
でもこれで安心できた。ありがとう」
俺はあまり安心できないが、まあいいだろう。
そういう生き方もあるという事だ。
でもちょっと気になったので怖いもの見たさで聞いてみる。
「参考までに個人的指導って何をしたんだ」
「一対一ならこの体格だし負けないからね。捕まえて急所を何回か蹴飛ばして動けなくなったところをひん剥いて、足で動けないようにあそこを踏みつけながら『次は潰すぞ』と脅しただけさ。証拠写真もスマホで撮影した。何ならこれもばらまくぞと」
ひえーっ。
それはとんでもなく痛くて酷くて怖いぞ。
男の身体を持っている女性人格だからこそ出来る惨さだ。
取り敢えず喜平君には今後とも
俺はそう固く誓ったのだった。
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