その2 入会審査は厳正です!?

 今日は何事も無く……も無いが、まあ昼休みにちょっとした暴言失言その他を知佳が放ったくらいで過ぎた。

 そしてやってきた放課後。

 俺は知佳と翠さんに挟まれて廊下を歩いている。


「想像制作愛好会は特別教育棟四階、第二講堂でやっているそうよ」

「何で講堂でやるんだ。そんなに人数が多いのか」

「ピアノを使いたい人がいるかららしいよ。他に場所を取る活動もあるみたいだし」

 そんな事を話しながら第二講堂へ向かう。

 今のところ襲いかかってくる魔法使いはいない。


「今日はまた襲いかかってくる事は無いよな」

「うーん、一番切羽詰まっていた人達には昨日実力の違いを見せておいたし、当分は来ないんじゃ無いかな」

「昨日の今日という事は無いと思うよ」

 二人の意見がそうなら大丈夫だろう。

 その言葉通り無事四階へと辿り着く。


 第二講堂の前の扉を前扉を知佳がノックした。

「頼もう!」

 おいおい討ち入りじゃ無いんだから。


「どうぞ」

 中からそう聞こえてきたので扉を開けて中へ。


 うん、混沌と書いてカオスと読む。

 そんな感じの情景だ。

 ピアノを弾いている女子が一名。

 何やら油絵を描いているような女子二名。

 パソコンに向かって何かをやっている女子数名。

 レオタードを着て何やら準備体操をしている女子二名。

 もう何がなんだかという状態である。


「あれ、新入生の方」

「ええ、入部希望です」

 翠さんがそう告げる。


「全員集合!」

 パソコンで何か作業をしていた女子のその声で、一斉にわらわらと集まってきた。

 総勢二〇人弱というところ。

 この人達が全員魔女なんだろうか。


「うん、見た限りは三人とも魔法使いね。資格条件は満たしているわ。それでは入会審査をさせていただくけれど、宜しいかしら」

 集合をかけた女の子が眼鏡を外しながらそんな事を言う。

 ちなみに眼鏡を外した姿は黒髪長髪のいかにもという優等生型美少女だ。

 俺はもっとロリな方が好みだが。

 そう思いつつふと気づいた。


 えっ、入会審査って必要なの?

 魔法使い以外をはねるためのいいわけじゃ無かったのか。


「大丈夫だよ」

 知佳がそう自信たっぷりに言う。

『私に任せておいて』

 そう伝わってきたが不安で仕方ない。


「なら私から参ります。ネットを使えるパソコンはありますでしょうか」

 翠さんが先陣をきった。


「ええ。どうなさいますか」

「ちょっと貸して下さい」

 代表らしい長い髪の長身の一般的美女(俺の好みだと育ちすぎ)が翠さんをパソコンに案内する。

「どうぞ」


「それではブラウザを使います。これで……と、これが私の最新の作品です」

「おおーっ!」

 歓声があがる。

 どれどれと俺達二人も後から画面を覗き込んだ。


 何だコレは!

 全裸に剥かれ後手に縛られた少年が三角木馬で悶えている。

 どうも何処かで見覚えある顔だなと思って、そして気づく。

 顔が俺だ!


「それでは採決を取ります。合格だと思う人!」

 見える限り全員が手を上げた。

 知佳まで手を上げている。

「絶対多数により、この方の入会は認められました」

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