第2章 魔法少女と秘密な友人

第6話 魔法少女と秘密の部活 

その1 部活に入ろう!

「そんな訳で蒼生、部活動に入ろう!」


 朝、いきなり知佳にそんな事を言われた。

 知佳の席は俺の目の前。

 そこから椅子反対座りで俺の方に向いている。

 大股開きだがパンツが見えそうで見えないのがちょい残念。


「何がそんな訳なんだ。何も聞いていないぞ」

「だって放課後どうせ暇だよね。飯を買って帰るにしても夜七時までに終われば大丈夫だしさ。なら一緒の部活に入って健全な汗を流そう!」

『始終私がついているわけにも行かないし、先生は帰りが遅いでしょ。なら部活で一緒にいる方が安全だと思うよ』


 話し言葉と伝わってくる意味がそれぞれ違う。

 これも魔法なのだろう、きっと。

 でも確かに俺の安全の為と言われるとそうだなと思う。

 ただ。

「健全な汗を流すと言っても、女子の運動部に俺が入るわけにもいかないだろ」


「実際に入るのは文化部だよ。健全な汗は帰りに何処か個室に寄って流すもので」

 おいおい。

「で、何処に入るつもりだ?」

「カラオケじゃ怒られるからラブホかな。でも制服だと入れないか」

「いやそっちじゃない、部活の方だ」


「残念!」

 知佳が一度自分の机の方を向き、ごそごそしてから何か小冊子を取り出す。

 見ると昨日配られた課外活動の案内冊子だ。

 彼女はぱぱぱぱぱと頁をめくり、そして広げる。

「ここ。想像制作愛好会」


 名称だけでは何をするところかまるでわからないな。

「どんな部活なんだ」

 俺も冊子を取り出して広げてみる。


『想像制作愛好会は、詩、文章、漫画、絵、彫刻等、形にとらわれずあなたの感性を表現する場所です。なお入会前にあなたの想像力を審査させていただきます。貴方の自信のある作品をお持ち込み下さい。作品の出来、もしくはその場で部員の与える課題に応え、合格点を取る事により入会を許可致します』


 何でも有りのように見えて、入会に審査が必要だなんてなかなか高飛車な部活だ。

「俺は絵も小説も書けないぞ」


「大丈夫だ。私にいい考えがある」

 知佳は自信満々だ。


「知佳のこの台詞は失敗フラグよ」

 横から翠さんがそう教えてくれた。

「大丈夫だ、問題無い」


「そもそもそんな怪しい部活に入るというのもどうかと思うぞ」

『実はその部活、学内の魔女の互助会なの。それも昨日襲ってきたような魔女じゃなくて、本来の女子高生の年齢の普通の魔女だけだから心配しなくて大丈夫よ』

 この裏の声は翠さんだ。

 なるほど、そういう事情があるのか。


 なら審査というのも魔女以外をはねるための口実だろう。

 知佳の台詞がいちいちフラグ臭いのが問題だけれども。

 でも俺は魔女ではないけれど大丈夫だろうか。


『義体は魔女や魔法使い扱いだから問題無いよ』

 なるほど、と思って気づく。

 知佳さては貴様、エスパーだな。

 いや違う! 魔法で俺の心を読んだな!


『ちなみに読んだわけじゃないよ、私は本来風の魔女、風関係が得意なんだ。他にも召喚とか空間とか人体固定とか色々使えるけれどね。この辺は予想して色々言っているだけ。なお私のスカートの長さだとこの姿勢でもパンツは見えません。残念!』


 おい。

 本当に読んでいないのか。

 微妙に疑念を残したまま予鈴が鳴る。

 まもなく一時間目開始の時間だ。

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