その4 せめて心にはロリを抱いて

 エロゲーの主題歌をバックに怪しい言い争いが響く中。

 突如、カラオケルームの扉が開かれた。

「話は聞かせて貰った! 人類は滅亡する!」

 何だって!


「いや失礼、テンプレを間違えた。話は聞かせて貰った! までだ」

 ちなみにそう言って入ってきたのは二十代後半推定Eカップ。

 つまり鈴木先生こと朱莉さんである。


「あちゃー、飼い主に見つかってしまったか」

 知佳がそう言って席に座る。


「まあそうしょげるな。若い頃は私もいろいろあった。君達はこれからでもチャンスはいくらでもある!気にするな」

 それって先生としてはどうかなと思いつつ俺はジト目で朱莉さんを見る。

 何せ美味しくなりそうな状況を終わらされたのだ。

 男としてがっかりするのは当然である。


「まあそれはともかく、本日は色々ありがとうな。おかげで私も新しいペットを失わずに済んだ。礼を言う」


「それならお礼として味見をさせていただけませんか。先っぽだけでいいですから」

 おい知佳、何という下品な事を。


「それももっともなんだが、この義体は本来私用に作ったものでな。賢者の石も大分増量して入れてある。ぶっちゃけ普通の魔女が性交した場合、魔力を完全に吸われて逝ってしまうぞ。それでもいいのか」


 知佳は右拳を上に立ち上がる。

「気持ちよく逝けるなら喜んで。我が生涯に一片の悔いなし!」


 朱莉さんはうんうんと頷いた。

「魔女としては見上げた態度だ。でも教師としては見逃すわけにはいかん。だからここは引け」


「うう、アイシャルリターン!アイルビーバック!」

「まあ危なくなくなったら一晩と言わず貸してやるから。それでいいな、そこの3D処女も」


「仕方無いです。でも何かそれ酷い言われような気がします」

「何ならお礼に新作二本まで買ってやるから我慢しろ」

「本当ですね」

「ああ」


 何か俺の関与できないところで話がまとまった模様だ。

 先生は財布から夏目漱石を数枚出す。

「それではこれが今日のカラオケ代だ。こいつは貰っていくぞ」

 俺、首根っこを掴まれて立たされる。


「うう、俺の意見は聞く必要無しですか」

「何なら布団の上で何度でも聞いてやる」

 つまり聞かないと。


「悪いな蒼生、権力でも魔力でもちょっと勝てない相手なんだ、鈴木先生は」

「せめて良い夢を見て下さい」


 わかった。

 今日は全てを諦めよう。

 今日も心にロリを抱きながら、身体を汚していくとしよう。

 ああ可哀想な俺。


「取り敢えず夕食の買い物だ」

 景色がカラオケボックスから移り変わる。

 毎度お馴染みのスーパーの前だ。

「今日も食事の片付けと夜のお仕事よろしくな」


 そこでちょっと疑問を持ったので聞いてみた。

「俺の身体化を促進するだけならほかの方法もあるんじゃないですか?」


 朱莉さんはにやりと笑う。

「だが断る! 今の方法が私にとって一番気持ちいい。諦めろ」


 あああ。

 俺の純潔が遠のいていく……

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