その3 設定ヨロシク!

「というのは置いておいてだな。実はこの事故も魔女の仕業だ」

 何だって!


「魔女にもいろいろあってな。ただ共通するのは土地の魔力が強ければ強い程魔法の力も増すという事だ。

 そして土地の魔力を強めるには悪霊だの怨霊だの地縛霊だのを作って土地を不安定化させるのが一番手っ取り早い。

 そんな訳で、手近に交通事故を起こした訳だ」

 おい、まさか。


「断っておくが私の仕業では無いぞ。むしろそんな悪事を止める側だ。何せ事がバレて魔女全体が迫害されたら面倒だからな。十六世紀のように逃げなければならない羽目になる」

 なるほど、一理ある。


「そんな訳で事故が無かった様に始末したんだがな、お前の身体だけはもうグチャグチャのメロメロでズタボロでグッチャリに再起不能だった。だから仕方無く私が私有していた義体の一つに入れたわけだ。あまり魂をそのままにしておくと霧散するからな、感謝しろよ」

 うん、大体の状況はわかった。


「それでその事故を起こした魔女は」

「残念ながら逃げられた。何せ事故の後始末をしなければならなかったからな。だが安心しろ。魔法紋は取っておいた。今度魔法を使ったら簡単に特定出来る。世界の何処にも逃げ場は無い」


 うむうむ。

「魔女にも警察みたいなものがあるのか」


「そんな面倒なモノでは無い。単なる自助組織だ。皆自分勝手だからな。でもだからこそ自分の自由を侵しそうな存在には寛容になれない訳だ」

 なるほど。


「参考までにその魔女が捕まったら」

「まずは魔法を奪った上でな。閉鎖空間でゴーレムにでもズッコンバッコン犯しまくらせる感じかな。後と前とついでに口も含めてだ。それとも粘液系がいいか触手系がいいか。その辺は気分次第だ、捕まえた魔女の」

 なかなか恐ろしくおぞましい世界だ。

 でも一つ疑問がある。


「そういう変態的性交が好みの奴だったら」

「それはそれで色々楽しみ方がある。むしろそっちの方が楽しいぞ」

 彼女がおぞましい笑いを浮かべる。

 これ以上は聞いてはいけない。

 俺は悟った。


「さて、話は変わるがお前、明後日あさってから学校に通って貰う」

 まさに話は変わるが、だ。


「いきなり何だ」

「その身体は十五歳相当だからな。あらかじめ書類を魔法で細工して高校入学出来るように細工しておいた。本当はもっと早く目覚める予定だったのだがな。まあ間に合ったから良しとしよう」


「何故高校に」

「理由は色々ある。ひとつは昼間でも私の目が届くようにだな。現在の私の仮の姿は高校の化学教師。だから貴様を目の届くところに置いておくなら高校生にするのが手っ取り早い。

 もう一つの理由は簡単だ。人間はあまり閉鎖環境に置いておくと簡単に精神を壊す。それはそれで楽しい場合も多々あるのは認めよう。でも長持ちさせるなら普通の生活をさせるのが一番だ」


 うーむ、嬉しいのか嬉しくないのか微妙な理由だ。

 でもそれならついでにお願いを一つ。

「どうせなら高校では無く中学に出来ないか?」

 高校生女子より中学生女子の方が俺の好みだから。

 本当は小学生の方が更に好みなのだが流石にこの身体では無理だろう。


「この家では私が法律だ。従わなければあの世に逝って貰ってもいいぞ」

「高校生でいいです」

 仕方無いので此処は妥協。


「そんな訳でお前は名前を鈴木すずき蒼生あおいとして桜景高等学校に入学して貰う。私こと鈴木朱莉あかりの甥という設定だ。他にも設定は色々作っておいた。後で印刷するからよく憶えておけ」

 理解したけれど、一つ疑問がある。


「確か桜景学園って、女子校じゃなかったか」

 確かこの辺の女子の名門私立だった筈だ。

 死ぬ前の俺の記憶では。


「少子化に伴い、今期から共学になった。これは私の仕業では無いから安心しろ」

 そうですか、はい。

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