その2 私は魔女だ!

 なら何故聞いたんだ! という苦情は取り敢えず置いておこう。

 正直俺はどっちでもいいのだ。

 何せこのスーパーの弁当は一通り食べた憶えがあるから。


「なら天丼弁当で」

「思ったより素直だな、面白く無い」

「ここの弁当は一通り食べた。味的にもそこまで拘る事は無い」

「そうか。なら有り難く天丼弁当を頂こう」

 なんでやねん!


 そんな感じで俺は唐揚げ弁当を取って、スーパーの割り箸で食べ始める。

「あと喉が渇いたらこのペットボトルで。コップは無いからこのまま飲め」

「コップは食器棚にあるぞ」

「出すと洗うのが面倒だ。しかも片付けなければならん。この私と間接キッスという奴だ、喜べ」 


 ふっ、残念だな。

「生憎俺のターゲットから十歳以上離れているんでね」

「むう、なら貴様のターゲットは何歳程度だ」

「広めにとって小学校、中学校、せいぜい高校だまで」

「お前、ロリコンか!」

「然り、と言いたいがこの身体だと普通だな」

「確かに」

 うんうん彼女は頷く。


「ところで話が進まないから説明行っていいか」

「頼む」

 そうだった。

 俺はどうなってどういう状態なんだ!


「その前に前提条件がひとつある。私の正体だ」

 正体って?

「まさか実は男だったとか」

「そう、でも性転換したから今は女、って違うわ!」

 ビシッ!

 平手打ちが飛んできた。


「痛い!親父にもぶたれた事は無いのに!」

「これ以上やりと話が進まないからリアクションは省略!

 そんな訳で私は魔女だ。魔法使いとも魔道士とも言っていい奴だ」


 なん・だとー!

 それってつまりはだ。

「女も処女こじらせて三十過ぎれば魔女になれるのか」

「実はそうだ。この世の全てでカップリングを妄想し腐女子道を究めれば貴腐人になり、更に研鑽を……って違う!それじゃない」


「念の為御題を電柱で」

「ああ、あの太く長くたくましいモノで私を貫いて……って違うわ!」

 ノリはいいようだ。

 でも電柱で貫かれたら死ぬぞ、普通は。


「話がすすまんから先を急ぐぞ。つまりはこういう事だ」

 彼女は俺の前で右手を翳す。

 右手人差し指の先が強く輝いた。

 うん、これは知っている。


「ブラックライトと蛍光物質を使った手品だな。よく出来ている」

「どこにブラックライトなんて仕込んでいる!」

 そう言えば見当たらないな。


「何ならファイアボールなりフリージングボルトなり出してもいいが部屋が荒れるのでやめておく。そんな訳で私は魔女だ。取り敢えず無駄口叩かず納得しろ」

 まあ今の光の部分奴でも充分だな。

 それに手品師も魔術師マジシャンと自称するし。


「それで仕事帰りにスーパーに寄ろうとしたらちょうど貴様の交通事故に出会ってな。もう放送禁止な位にグチャグチャでヌメヌメでベッタベタでホラーな状態だったがな。まだ魂が霧散していなかったので取り敢えず捕まえておいて、手持ちの義体に入れておいた。ついでに硫黄とリンと貴様の骨とを載せて措置しておいたら無事復活してしまったという訳だ」


 おいおい、オカルトかよ。

 そう思って気づく。

 最初から魔女だって言っているよな、目の前の彼女。


「恐ろしや、魔女の秘術」

「そのおかげで助かったんだ、感謝しろ」

 確かにそうだな。


「ありがとうごぜいますだ、魔法使い様。お礼にどうぞこれをお納め下さい」

 弁当の唐揚げを一つ進呈。

 彼女はそれを見て大きく頷いた。

「うむ、それでよろしい」

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