第2話 おばさんは、魔女
その1 家主との邂逅
夜七時三十四分。
ガチャリと鍵が開く音がした。
「おおっ」
驚いたらしい声がする。
大人としては比較的若い部類の女性の声だ。
なお若いというのはあくまで一般論での若さ。
俺基準なら十九歳以上は全員ババアだ。
足音がどんどん近づいてくる。
ネットサーフィンをしている俺の背後でリビングの扉が開く気配がした。
「すまんな。起きがけ早々掃除をして貰ったようで」
「暇だったからな」
これは事実だ。
ここ数年の俺は本来、何をするにも気力が無い状態。
でも
そんな訳でまずは目についた汚部屋の片付けをやった訳だ。
実は汚部屋を片付けるのはそれほど難しくは無い。
俺の長年の経験でいうと、ゴミと洗濯物を片付けるだけで九割は綺麗になる。
俺が判別できない物は全部ゴミ!
ここはきっぱりとした態度でやらないと綺麗にならない。
あとは掃除機なりホウキなりでホコリをごいごい吹っ飛ばせば完了だ。
キッチンに虫が湧いていないのが幸いだった。
そうなると流石に手をつけるのも恐ろしくなるから。
「ゴミは分別して袋に入れて玄関脇の部屋へ、洗濯物は色柄物、ネットが必要なもの、普通のに分けで袋に入れて洗面所に置いておいた。勝手に洗われたくないなら自分でやってくれ」
「ありがとう。助かった。どうも一人暮らしだと色々やる気が起きなくてな」
「それでこの状況を説明してくれると有り難いが」
俺はパソコンから目を離して振り返る。
年齢は二十代後半位、黒髪ストレート肩よりちょい長。
顔はそこそこ整っている方だろう。
だが俺の基準でいうと胸がでかすぎる。
グラビアで鍛えた俺の目はEカップと判定。
俺は貧乳教徒なのでCカップ以上はただの牛だ。
小さくて形のいい品があるおっぱいこそ正義!
膨らみかけの小さなおっぱいなら至上!
まあ彼女は年齢も俺基準より遙かにオーバーしている。
だからどっちみち問題外なのだが。
「簡単に言おう。お前は死んだ。以上だ」
彼女はあっさりとそう言う。
「どうだ、理解できたか」
「簡単すぎてわからない」
これでわかる奴がいたら悟りの化け物か超能力者だ。
俺は魔法使いかもしれないが残念ながらわからない。
「だろうな」
彼女は頷いてドン!と買い物袋をテーブルの上に置く。
「詳細は飯を食いながらにしよう。スーパーの半額弁当や惣菜が結構残っていたから買ってきた。食べるだろ」
「ああ」
俺は頷く。
「昼飯がカップラーメンと豆腐、プリンだけだったから腹が減った」
彼女の表情が変わる。
「あのプリンを食べただと! アレは私の活力源なのに」
「食べ物が冷蔵庫に入っていると書いてあったけどな、ほとんどが賞味期限を大幅に過ぎていた。やばいのは全部廃棄したからな。もう残っているのはストロングな発泡酒だけだ」
彼女はあきらかにがっかりした表情でそれでも小さく頷いた。
「確かにそうだな。非は認めよう。まあ今日の分のプリンは買ってきたから取り敢えずは大丈夫だ」
そう言って彼女は袋から惣菜等を取りだしテーブルの上に並べ始める。
ちなみにこのスーパーは俺が死ぬ寸前に立ち寄ったスーパーと同じだ。
スーパー名だけでなく店舗名も含めて。
「弁当は残っていたのがこの二種類だがどっちにする?」
鶏唐揚げ弁当と天丼弁当だ。
天丼弁当の方が元値が高いが鶏唐揚げの方がボリュームがある。
「なら鶏唐揚げ弁当で」
「だが断る!唐揚げ弁当はわしの嫁!」
おいおい。
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