付録 ◆◆  勇者と奴隷の蛇足(ボーナストラック)  ◆◆

奴隷の喜びを理解しようと努力をする俺。


そういう用途は考えていなかったが、主人として奴隷の要望から逃げてはいけないと考え直した。


度重なる失態で俺は追い込まれていた。


このままではよいご主人になることは叶わないのではないか。そう思っていた。


――ここは、挽回するしかあるまい。


虐待しなければ。良いご主人として、奴隷に飴を与えなければ。


これはもう鬼気迫る使命感である。



前戯はいるか。


必要ないようにも思える。


しかし待てよ。


失点を大きく取り戻さんとするならば、ここはサプライズが必要ではないか。


同じ虐待でも、気持ちよい地点からの痛い思いへの急降下。これこそが効果的ではないか。


そうに違いない。俺は確信をもって前戯を選択する。


「仰向けに寝て楽にせよ」


外はもう日が落ちている。


室内はランプの明かり。


薄暗い中、ディオネはキングサイズのベッドに仰向けに寝る。


目をつむり震える烏女の胴体に手を添わせ、優しくこねるようにマッサージを始める。


身体全体をマッサージ。上から下までマッサージ。


股間に至っては三倍以上の時間をかけて丁寧に。


何度も跳ねる腰をそのたびに押さえながら豆を含みつづけ、煮豆を作った。


――そろそろか。


煮豆を仕上げること一時間。俺は伝説の剣を取り出す。


黒ひげ危機一髪ゲームの開幕である。


これこそが俺の考えた最高の虐待。奴隷垂涎のひと時。


けれども。そのサプライズは彼女にとってのものだけとはならなかった。


なんと最初の一突きでディオネは海賊よろしくずっぴょーんと飛んでしまったのである。


おかげで俺は飛ばさずに済んだけど。


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