神樹騎士団 ⑤-3-1
「こんなところにいたのね。探したわ」
バルコニーで休憩していると来られるはずのない人物がやってきた。
一発で誰かわかる豪華なドレスで着飾った女。
この
貴族どもの腹芸攻勢によるストレスで死にかけていた俺。秘書と取引をしてなんとか休息チャンスをゲットしたのもつかの間のこと。キ〇ラの翼で街に戻って宿屋に入った途端ラスボスにエンカウントするみたいな意味の分からないシナリオ。〇けしの挑戦状かよ。
「これはこれは姫殿下。こんな場所でお会いするとは思いませんでした」
心からそう思ったね。マイナス的な意味で。
続けたい言葉は「標的を探すにしてもその役は下っ端の者、よくて幹部までだぞ」とか「
「この度はお誕生日おめでとうございます、姫殿下」
「え? あ、うん。ありがとうキルヒギール伯爵」
丁寧に返礼してくださる第三王女。
確か今日で――いくつになるんだったっけか。いかん。聞いていたかもしれんが覚えてない。
見た感じお若いというか成長しきっていないというかそんな感じがする。
「しかしこんなところで偶然ですね。姫殿下もご休憩でしたか?」
「そ、そうね。ぐ、ぐううぜんかしら? ふ、ふふふふ」
なんだか落ち着かない感じでそわそわしていらっしゃる。
ここは逃げるか。
あまり長い時間相対しているのは危険だ。俺の第六感がそう告げている。
「私はそろそろ戻ろうと思っていたところなのです。姫殿下におかれましては色々な方々とお話されてさぞお疲れでしょう。私はここで失礼させていただきますね。ではごゆっくり――」
「ま、待ってくださるかしらキルヒギール伯爵? 少しあなたと、は、話したいことがあるのだけど……」
そう言って退路を塞ぐ第三王女。
嫌な予感がビンビンする。
なにせこの女は鉄砲玉ならぬ婚約玉。王が無理やり俺を一族に取り込まんとしてあてがってきた女である。断った俺にプライドを傷つけられたであろう彼女が俺に好意を持っているはずはない。恨み事の一つ二つといわずここでいっそ俺を社会的に殺しに来たという仮説の方がまだ信憑性がある。
――なんということだ。ダールの秘書に今度領内の視察をさせる約束までして手に入れた休息時間だったのに事態が悪化したぞ。ひどい罠もあったものだな!
「はぁ。話ですか?……姫殿下? 私に何か?」
めっさ目が泳いでる第三王女。顔を真っ赤にして息を荒げていらっしゃる。
怖い。怖いぞ。このお姫様、どんな手札を切ろうとしているの。
「あのね、えっと、あなた、その、わ、わた、私――」
思わず一歩後ずさる俺。
対する第三王女は前に出る。
そして何かを決意したかのような驚くべき豹変――目に力を灯した凛々しき表情――をもって、口を開いた。
「私と――付き合って貰えないかしら?」
――……? ……ぅん??
言葉を言い放った姫の瞳は、さながら超必殺技を放った瞬間の戦士のソレであった。
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