神樹騎士団 ⑤-1-3
ドワーフ。
それは醜く老人のような皮膚を持つ背の低い頑健な種族だ。
矮躯でありながら屈強。
豊かな髭を生やし、大酒飲みで意地汚い。
しかし手先が器用であり、誰もが鉱夫、あるいは細工師や鍛冶屋などの職人である。
エルフとは対極にあるような存在であり、その為エルフに対しては先祖代々不信感を抱いている。
エルフと違い植物を愛でることや乗馬などを苦手とするが、彼らが作り出す細工道具作品はエルフの作品よりも優れたものが多い。
またエルフと違いドワーフには女性が存在しない為、新しいドワーフは石から作られる。
ドワーフからはエルフの本能たる生殖機能がオミットされているため、転生という手段によって種族的新陳代謝をする。そのため彼らは山の洞窟や地下に隠れ住んでいることが多い。秘術によって山の命、別名霊脈から命の石を得るためだ。
トンネルを掘り迷路と化した地下を移動する彼らを見つけるのは容易ではない。加えて基本彼らは排他的であり、エルフらとどころか人間とも友好的ではない。犬らと仲良しだったのは僥倖だ。今回の事件を機に渡りをつけることができたのは大きい。
彼らの作り出す
そのうち亜神らの持つ移動要塞崑崙山で採れるというオレイカルコスを手に入れる機会を得たなら、
最初の依頼は我が領地を守る騎士団の装備づくりだ。
ちょっと緊急案件が入ってしまい、そういうのが大至急入用となった。
出会って早々デスマーチ案件を振らなければならないとか今後の関係が心配だが仕方がない。その分報酬には色を付けて、彼らにはガンガン投資をしていきたいと思う。
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神樹庭園で試験生産されているのはカカオや香辛料や砂糖だけではない。
アーティチョーク、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、かぶ、ブロッコリー、カリフラワー、ピーマン、キュウリ、ナス、ニンニク、レタス、スイートコーン、オクラ、長ねぎ、にら、玉ねぎ、グリーンピース、かぼちゃ、ほうれん草、サヤインゲン、トマト、キャッサバ、ジャガイモ、サツマイモ、タロイモといった多種多様な植物の生産が試されている。
試験生産のため品種が多く一つ一つの作物の量は多くはない。
かなり大きな試験生産となっているため人手が足りない現状だが、それでもそこから儀仗兵として烏女七十名の内ケルベロスに騎乗する二十一名を抜かなければならない。
ディオネは神樹庭園の統括役なので除外。
マルギットも烏女の管理者なので除外。
という消去法で、リコを中心にメンバーをそろえることになった。
「
「うむ。では装備を誂える。集合をかけろ」
地下活動とかアンダーガールズとか詳細は知れないが、きっと特殊訓練を積んだ選ばれしすごい感じということなのだと思う。
でも選考基準は何なのか。戦闘力なのだろうか。儀仗兵は戦闘をする兵士ではないのだが、もしかするとそういうのも必要なのかもしれない。戦士としての経験はふとした所作に現れると聞く。兵としての説得力が変わってくるのだろう。
俺は二十一名と顔合わせした後、彼女らを引き連れてヒミコの元へ。
次にヒミコに作らせた採寸データの控えを持って北の山の洞窟にあるドワーフたちの工房ギンヌンガ・ガプ工廠へ連れて行き、
与えるのは万が一の場合考えた守備特化型装備、
その後は選抜された烏女を引き連れ、実際に烏女をケルベロスに騎乗させ歩行訓練を実施。
ちゃんと騎乗用の馬具ならぬ犬具をつけているのだが、なんだかうまく乗れていない。けどまぁそんなものか。犬に乗るなんてそうそう経験することじゃないしな。これを機に、騎兵として様になるよう毎日日の出から日が暮れるまで練習して欲しい。
皆半泣き顔だったようにも見えたが気にしない。だって俺は、そもそも烏女には兵役をしてもらおうと考えていたのだ。実際に戦わせないだけ好待遇だと思う。
まぁでも、やっぱりスパルタが過ぎるかな? と思わなくも無かったので念の為リコに相談してみたら
「キモメンと握手するのに比べればこの程度大したことではありません」
と言っていたので、多分大丈夫だ。
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