神樹騎士団 ⑤-1-2
烏女は七十名の大所帯になった。
しかし住居には余裕がある。元々ここにいた者が戻ったに過ぎないからだ。
烏女達の住居は長屋だ。長屋は一部屋六畳一間の広さが基本となっている。入り口には土間があり、そこには煮炊きをするかまどが付いているので実質四畳半部屋だ。部屋を広く使うため寝具は布団が採用されており、昼間は部屋の隅に畳んで置かれている。
みんなで一緒にご飯食べるのかと思いきや個別化が根付いていてちょっと驚いた。
並んで建てられている長屋の路地には溝板が走っていて下水が流れている。
路地の突き当りにある空き地には共同井戸、共同ごみ箱、共同便所があった。
ゴミ箱のゴミは一定期間ごとに当番が焼却処理をする。汚水はアメーバ状のなにかが処理をしているらしい。
汚物を糧にこんもりと増殖した粘体群のうち寿命を迎えた個体は塊から剥離され地面に滑り落ちる。烏女はそれを回収して畑にまく。それらは土に吸収されよい肥料になるとか。
自然の循環が出来ている。畑で作られる作物はアワキビヒエ大豆やインゲン豆など健康に良さそうなものばかり。烏女達の主な食事は雑穀を炊いたものと塩豆スープと豆の漬物だ。
素晴らしい。烏女らの自給自足なスローライフ。一見貧しそうに見えるがこれなら飢えて栄養失調で死ぬなんてことはないだろう。
だが。
食事のお誘いは丁重にお断りさせていただく。
烏女の食事の方が健康に良さそうだけど、当方栄養は間に合っておりますゆえ。
何だよ粗食って。そんなに健康になりたいなら粗食じゃなくてもっと本格的に色々食えよ。「ま・ご・は・や・さ・し・い」でもくってろ。「ま」は豆、「ご」はゴマ、「は」は発酵食品、「や」は野菜、「さ」は魚、「し」はしいたけ、「い」はいも。あとは肉と乳製品くらい食っとけばいいんじゃね。
質素倹約自給自足のスローライフとか全く興味ないです。それって無知の極みじゃん。ノーサンキューだよ。
まぁここの生活で強いて興味がそそられたものといえば、汚物処理をする生き物くらいか。
――烏女らの言いようだとどうも処理速度が遅くていまいち使い勝手が悪いそうだけど、世界に普及させて人類の英知で改良できればすごいものに化けるかも知れない。
キルヒギール領の唯一の産業はごみ処理だ。大体どこの国もゴミはへき地へと捨てに行っている。それを一足飛びで完全解決できる手段がもしもあるのだとしたら。その発見は歴史の転換点となるだろう。
死後肥料にまでなるという不思議生命体に興味を持った俺。ちょっとウキウキで何人かの烏女らに案内してもらいそのブツを見に行った。
ら。そこにいたのはエルダーウーズだった。
「……お前らって、実は勇敢なの?」
「?」「?」「?」
古代竜種に並ぶ凶悪生物【
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かつて神々がまだこの世界に住んでいたころ。
世界のダンゴムシとして産み落とされたのが初期型エルフである。
エルフは日がなセックスの研究をして過ごしていた。
肉の生み出す快楽の追求こそが彼らの使命であり日課であった。
その目的にはなんかすごく崇高で難しい理由があったと思うのだが覚えていない。ぶっちゃけ俺には理解できなかったからだ。
でも要約するとやってたことはセックス。
それでいいと思う。詳しい設定を知りたければこの物語ではない別の物語を参照してほしい。
そんなわけで初期エルフは妊娠しない。繁殖しない。
だから神々がこの地を去ったことにより初期エルフの運命には暗雲が垂れ込めた。
初期エルフは不老であったが不死ではなかった。
魔力はあったが暴力を知らなかった。
彼らは地上から神々がいなくなるとすぐに人間に捕まった。
神々が最後に産み落とした知的生命体、今でいう「人間」によって、初期エルフは玩具奴隷として酷使された。
彼らは「(斬新なSMプレイだな)」と思っているうちに死んだらしい。生きオナホにされ最終的にリョナったという末路だ。そうやって初期エルフはガンガン数を減らした。
ある日。
それを見ていた邪神の一人が、初期エルフの絶滅を惜しく思い、彼らの何人かを攫って複製を作ろうと頑張った。
しかし邪神には完成された神々の芸術たるエルフの複製を作ることは出来なかった。部分的な複製はできたが、それらをひとつにまとめることができなかった。
邪神が作れたのは初期エルフの筐体重視個体と能力重視個体だ。
神々によって生み出された初期エルフをハイエルフ。
ハイエルフ複製工程を形から入り新機能生殖能力を追加したために筐体の容量不足を起こしてしまい、特殊能力を取りこぼした状態で完成させてしまった個体がライトエルフ。後のエルフだ。
取りこぼした能力を優先しライトエルフの欠点だった筐体の強度を上げ、容姿は二の次にし完成させたのがダークエルフ。後のダーフ、つまりドワーフである。
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