ギンヌンガ・ガプ工廠 ④-2-2
神樹庭園に放し飼いにするか? いやそんなことしたら烏女さんたち発狂する気がする。わかんないけど俺の印象では彼女ら割と神経質っぽいから。
じゃあ犬小屋でも作って閉じ込めておくか。
誰が作るんです?
はい自己解決。無理。そもそも閉じ込めることなんかできるのか?
オルトロス組はどうも群れの中の年寄り連中というか重鎮ポジションの個体が多いみたいだし。閑職に追いやるとプライドが傷つきそう。
――ん? 死んで時間のたってる個体がオルトロスになっているのか?
よく見ればメスとかキッズもみんなオルトロス。最後に戦っていた精鋭だけがケルベロスになっているのかもしれない。およそ二百頭の群れはオルトロスがメインのようだ。
それを隔離するというのは難しいか。でも手元に置けばいつか問題となる。
「お前たち、生活拠点はあるのか? 今までどんな所に住んでいたのだ」
『へい
元の家に帰せばいいじゃない、と思った俺の質問に答えたのは赤毛のオルトロス・リキ。
「いわお? とは、なんだ? 種族名か? 人名か?」
『岩男は岩男でさぁ。あぁそうだ
「ふむ。その様子だと、なかなかにお前たちと親しい間柄ということか。いいだろう。私からも挨拶くらいしておこうか」
『さっすが
『親父勝手な……わかったよ。
「うむ。だが、その前に――」
俺は辺りを見回す。
周りには体長三メートル以上の巨大な熊があちこちに横倒しにされていた。
そのまわりにも熊の死骸がわんさかある。
看破の権能では相手のレベルを知ることはできない。
しかしこの犬どもと戦っていたあの熊は、パッと見た感じでもレベル四十オーバーは間違いなかった。例え犬どもが不死族となり戦闘力を上げたとしても、十レベル以上の差を覆せるとは思えない。
絶え間なく物量で押したとしても、抑え込むことはできるかもしれないが倒しきれる相手ではなかったはずだ。レベルという摂理はそんなに甘いものではない。覆しようのない実力差こそを、レベル差というのだ。
「――詰めの甘いお前たちの尻拭いをしておかなければな」
『……と、申されますと?』
『そりゃあいったい、どういう意味ですかい、
ギンは不思議そうな、リキは釈然としない思念を伝えてくる。
確かに目の前にあるのはどれも死体。どう見ても死体。
しかし俺は熊に近づく。
その距離二メートル。
そこで
「ガアアアアアアアアアッ!!」
大きな咆哮とともに前方を薙ぎに来た熊の爪。
『なんだと?!』
『赤カブトの野郎! まだ――っ?!』
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