ギンヌンガ・ガプ工廠 ④-2-1

森の警備を兼ねて散策をしていると突然思念伝播が届いた。


相手はまさかの犬どもからだ。


すべてが順調に進んでいる。そんなウキウキな時間の終わりを告げられた気がした。


やぁ。不死族を舐めていたね。


なんというかさ。あのスキルを持っていた奴が不死だって言われていた時に気付くべきだった。


だがもう遅い。知らないふりはできない。


俺はヒミコと一緒に現場へGO。


そしたらそこには大勢のワンコたちがずらりと整列しているじゃない。


俺の気配を感じ取ったのかみな腹見せ姿勢での待機だった。何が起こったのかわからない俺でも、流石にそれを見せられれば計画がとん挫したのを理解できる。


そしたら次の行動はおのずと決まってくる。原因の究明だ。


はい看破の権能を発動。



【[ケルベロス(銀毛)]

「保存」「再生」「霊化」の権能を持つ大型死霊犬。以上の三権能を併せ持つことから三つ首を持つ地獄の番犬と呼称されている。五十頭の群にして個。

特殊スキル

蛇の鬣:主が消滅しない限り不滅である保存の権能。

竜の尾:傷を受けてもたちどころに癒える再生の権能。飲食不要。疲労無効。

青銅の咆哮:主の呼び出しでどこにでも具現化する霊化の権能。


[オルトロス(赤毛)]

「保存」「再生」の権能を持つ大型死霊犬。以上の権能を併せ持つことから双頭の番犬と呼称されている。

特殊スキル

蛇の鬣:主が消滅しない限り不滅である保存の権能。

蛇の尾:傷を受けると高い治癒力を発揮する再生の権能。飲食不要。疲労無効。

~精霊図書館『魔物大全七巻』より基本情報抜粋~】



ふーむ。


これアレだな。術者がいる限り死なない系だわ多分。


もしくは俺の魔力が尽きない限り何度でも甦る系。


そうですか。


それを捨てるなんてとんでもない! 案件でしたか。


くそが。まじかよ。


永続お世話が確定していた事実を今更認識した俺。


色々と諦め、とりあえず現実から背けていた目を頑張って戻す努力をすることにする。


「お前はギン。お前はリキ」


『ギンの名、謹んでお受けいたします、主様あるじさま


『今後とも宜しくお頼み申しあげやす、大親分ボス


銀色の毛並みのギンが部族の長。


赤色の毛並みのリキは引退した元族長らしい。黄泉の国から出戻り組の一匹。


聞けば彼らは魔犬になる前、北の氷山ホーンテッドマウンテンの麓一帯を縄張りとして暮らしていた部族らしい。


まぁ現在は犬からケルベロスになってしまったけれど、みんな見ただけなら絶対にケルベロスだとは思えない見かけをしている。


どこからどう見ても巨大化した犬にしか見えない。毛がふわっふわの超でかいゴールデンレトリバーって感じ。


ぱっと見魔獣枠でいけるんじゃないかな。王家の馬車を引く八足白馬スレイプニルも魔獣だし、不死族ってバレなければ案外イケるのでは。許容範囲では――いやバレるよ。簡易鑑定魔法サーチで一発だよチクショウ。


――とはいえ、殺せないとなると隠して飼うしかないわけだが、大所帯過ぎて放し飼いは無理だな。目立ちすぎる。


ケルベロスは消えてろと言えばいい。霊化できるらしいから。


でも黄泉の国からの出戻り組のオルトロスはそうはいかない。霊化できないから。


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