マルギット ③-1-1
本当に矢を射かけられそうになったので奥の手投入。ゲートオープン。
大きく開かれた門から出てきた
「ご主人様申し訳ございません。お恥ずかしい所をお見せしました。不甲斐ない我らをどうかお許しください」
「詫びずともよいディオネよ。彼女らはお前の管理下にはなかったのだ、お前に非はない」
「ご主人様の深き御慈悲の御心には感謝の言葉もございません。この失態を払拭できる機会をいただけるのであればこれに勝る喜びはございません。何卒私に一族の統括をお命じ下さいませ」
「うむ、任せようディオネよ。全てお前の好きにするがいい。だが、少し堅苦しいな。張り切るのはよいがもっと楽にせよ。お前が責任を感じることはないのだ」
「……はい。ありがとうございますご主人様」
しばしディオネとイチャコラタイム。
奴隷とご主人様ごっこをする。
その後、ディオネは烏女一人一人を教育したいので少し時間をくれと申し出てきた。
もちろん二つ返事で承諾。
「さぁ。私の目を御覧なさい。あなたは生きる価値のない愚物。自我を持つなどおこがましい虫けら。あなたはご主人様の生きた道具。ご主人様の為だけに生き、ご主人様の為だけに死ぬのです――」
何やらディオネが部下に込み入った指導を始めたようだ。
物騒なことを言っている気がしたがきっと気のせいだろう。
邪魔しては悪いので俺はその場からそそくさと離脱した。
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天空の城が俺たちを拒絶しなかったのは、単に拒絶する力すらなかったからだ。それほどまでに世界の中枢――世界樹は弱っていた。
このままでは遠からずこの世界は壊れる。虚無に飲まれて圧壊する。概念は風化し、伝承は誰の記憶からも消え去るだろう。今このタイミングでここに訪れることができたのは僥倖であった。
伝説上の存在、世界樹の木と、それを擁する天空城。どちらも俺の勇者時代に耳にした話だったが、俺たちでは見つけるどころか所在の手掛かりすら得られなかった。
それもそのはず。ディオネの記憶では天空城が滅びたのは相当な昔。初代魔王が発生し初手に行ったのが神々の遺産の排除・隔離だったのだ。
魔王は天空城も世界樹も物理的に破壊したが、どうやって知ったのかそれだけでは不十分と気が付き、関係するすべての存在を滅することに注力していた。
殺すではなく、滅する。対象が生者ならありとあらゆる苦痛を与え心を破壊し精神を無に帰す拷問。
ディオネの記憶から分析するに、彼女は大神の加護によって奇跡的に魔王の手を擦り抜けているが、この隔離された概念宝具の綻びを見る限り関係者はもれなく滅されていると思える。気の滅入る話だ。
――調整する前に、世界樹を起点にした魔術の有無を確認しないといけないな。
勝手に調整してそれらを引っぺがしてしまっては大変だ。相手は砂上の楼閣そのものなのだから。ちょっとした油断ですべてが壊れてしまう可能性もありうる。
俺は世界樹を触診しつつ必要な外装があるか
――足りないな。やはり最初のプラン通り倭国を使うしかない。
ヒミコだけで事足りるならそれでもよかったが、世界樹を診断した結果、事はそれで収まりそうにないとはっきりした。神々の遺産一つの重りとして島国一つが必要だ。
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