天空の城 ②-2-1
急造要塞帰宅後。ロビーにて。
「はぁ。……ゴホン。あー、ディオネ。寝室の隣の部屋を暫く使わせてやる。そこに荷物を片付けたら、あとは呼ぶまで自由にしてよい」
畏まりましたとその場で一礼し、荷物を持って早歩きで移動するディオネ。
その後ろ姿を見送ってから俺はテーブルに指令書を投げ置き、だらしなくソファーに身を投げる。
ふー。どうしよう。
人を集めるとかマジ無理。
そんなことできる能力があったらもうちょっと早く魔王を討伐出来ていたと思う。
人を集めるとか俺のコミュスキルレベルでは無理だ。
勇者様御一行は勝手にみんなが寄ってきて、結果できてしまった集団であって俺が集めたわけじゃない。
騎士団だの兵団だのと俺に人材を集められるはずがない。人を集めるって簡単に皆いうけどさ、どこのどんな奴かもわからないようなその辺の馬の骨と一緒にお仕事できますかって。面接は必須じゃん。でも面接は俺には無理だよ。入団試験とかどうすりゃいいか全くわからないもの。「熱いコーヒーが一杯、そして冷蔵庫から出したばかりの冷たいミルクがあります。室温はコーヒーの温度とミルクの温度の中間です。最初、途中、最後の、どのタイミングでミルクをコーヒーに入れると最も早くコーヒーの温度を下げることができますか?」とかそういう採用試験問題を俺が思いつくことなんて絶対にない。そういう問題の答えを俺の頭でひねり出す事も不可能だ。亀の腹筋案件であること甚だしい。あぁこれ無理だ詰んだわ。
――……ブッチしたらどうなるのかなぁ。
俺の力は賊を一匹一匹倒すのには向いていない。オーバーキルすぎて燃費も悪い。隠れたり逃げたりする相手を追跡して倒すのが苦手だ。魔王や幹部の魔物は逃げないから考えようによってはそっちの方が楽だったとすら思える。
――いっそ伯爵なんてやめてやろうか。いやでもなぁ。そんなことしたら色んな嫌がらせされるだろうなぁ。
道歩いてたら突然うんこ投げてくる集団とかに囲まれるかもしれない。
外食したら皿に虫とか入れられるかもしれない。
それで短気おこして暴れたら警備兵にしょっ引かれて、脱獄したら指名手配されて、あれよあれよと冤罪を盛られて国賊にされて、下手したら新しい魔王に指定されたりするかもしれない。
そうなったらもう第二の人生を謳歌するなんて言っていられなくなる。俺は楽しい人生を送りたいだけなのに。逃走人生とか絶対ノーサンキューだよおーまいがっと。おーまいおーまい、がっとががっと解決したりしないだろうか俺の知らない間にいつの間にかにこの難題。
などと考えていたら。
「ご主人様。騎士団設立の件でお困りなのですか?」
いつの間にか戻ってきていたディオネが疑問を口にした。
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