天空の城 ②-1-2
今日はダールの店に行き奴隷の衣装一式を受け取りに行く。
紹介状を貰った時に手配するよう頼んでおいた使用人服だ。
朝食を終えると俺はディオネにマントを着せた。
俺のお下がりのダイダロスマントはマジックアイテムなので装備者に合わせてサイズが勝手に調整される。
だがここで俺がディオネに与えるのはそれだけだ。
ディオネのマントの下は裸である。
つまり全裸マントだ。
奴隷はこういう格好で衆目にさらされるのが好きだと俺は奴隷商会に行った時に店内で話をしていた男たちの声を拾い知っていた。
何でも裸マントとは魔女や女吸血鬼による
他にも【
ディオネもかつては女王だったかもしれないが、俺の奴隷となったからには奴隷世界のドレスコードに慣れてもらわねばならない。前職が例え取締役だったとしてもそんな経験はここでは役に立たない。過去の栄光は綺麗さっぱり忘れてもらい、新たな職場では初心にかえってこれからを務めなければならないのだということをその身に叩き込む。今日の衣装はその一環である。
俺は集会だの茶会だの食事会だのという儀式が大嫌いだ。だが、だからと言ってそういうのをないがしろにするのは違うかなと思っている。
残念ながら俺はもう平民ではない。上級貴族の伯爵になったのだ。奴隷にも仕える主にふさわしい品格というものを周りから求められる。
対策を取らないわけにはいかない。こいつに恥をかかせられない。それをするということは、それはそのまま俺の恥となるのだ。
奴隷のイベントは待ってはくれない。そういうイベントに参加させる機会があった場合を考えて、よいご主人様たる俺は今からしっかりと準備をし、こいつに恥ずかしい思いをさせないよう善処する。これぞ奴隷主人の鑑。
とはいえ、いきなり人がゴミのように多い王都の往来を特別衣装で歩かせるのもスパルタが過ぎるというものだろう。
なのでダールの店へは転移スキルを使って行く。
ダールの店に設置した転移門を開き、俺たちはそこを潜り抜けた。
「ようこそお越しくださいましたキルヒギール卿」
「頼んだものは用意できているかな?」
「はい、もちろんでございます」
「それは重畳。では、ディオネ」
俺の後ろに控えていたディオネがスッと前に出る。
「君、ダールから話は聞いているだろうと思うが、コレがそうだ。着せてやってくれ」
「畏まりました。では、こちらへ」
俺が目配せするとディオネは頷き、店員の後ろについていく。その後ろ姿を俺は黙って見送った。
ディオネが戻ってきたのはそれから三十分後である。
俺は店員が用意してくれた椅子に腰かけ古代遺物魔道具スマホで箱庭シミュレーションゲーム【ジャングルxジャングル】をして時間を潰していた。
「お待たせして申し訳ございませんご主人様」
ふと顔を上げるとそこには頬をちょっと染め恥じらうディオネの姿。
着ているのはメイデンフォルクローレというカテゴリーゴスロリ種のメイド服だ。
「素晴らしい。思っていた以上に似合うな」
マネキンに着せていたのとは雰囲気が違い過ぎて全くの別物に見えた。
黒を基調とした白のひらひらがアクセントのその服は凛々しくてかっこよくなる衣装だと思っていたのだが、彼女が装備すると可愛い衣装だったのかと認識を改めさせられる。
黒髪褐色肌に気持ち吊り目の金瞳奴隷少女によるゴシックメイド戦闘服姿。なかなか悪くない。
「このような素晴らしいものを与えていただき有り難うございますご主人様。心より感謝申し上げます」
「よい。仕事着を与えたに過ぎぬ。他にも何着かあっただろう、必要に応じて使い分けるように。それと先に言っておくが、私は女の服には疎い。足りないものや欲しいものがあったなら店の者に伝えておけ。館まで届けさせる」
「畏まりましたご主人様」
俺に対し深くお辞儀した後、俺の言葉に従い店員と話をし始めるディオネ。
その待ち時間で俺は【ジャングルxジャングル】を区切りのいいところまで進める。
それが終わり、さて用は済んだな帰るか。と、帰りかけた時、この店のオーナーであるダール自らがやってきた。いつもの能面のような表情で。
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