第312話


「あれ?ベルくん。まだいたんだ」


ダンジョン巡りに出てから30日を過ぎたから、すでに王都に戻ったと思っていた。

さくらにそう言われて、『ベルくん』ことロンドベルは苦笑する。


「ええ。ちょっと相談したいことが起きましてね。

このままココで話を続けると、また『恨み節炸裂』させてしまうため、場所を移してもらいたいのですが。

・・・ん?新メンバーですか?」


ロンドベルがシーナたちの後ろにいるジョシュアたちに気付いた。


「ダンジョンの途中で落ちてたから拾った。

今から冒険者ギルドに届けてくる」


さくらの言い方に苦笑するロンドベル。


「じゃあ、ついでに私も『拾って』貰えませんかね?

一応、『神聖騎士団』に所属してましたから魔物相手の戦闘は出来ますよ」


「・・・どうする?ハンドくん」


〖 まあ。役に立たなければ廃棄処分にするだけです 〗


「まあ・・・盾くらいならなれますよ」


〖 まあ。魔物のエサくらいならなれますね 〗


「そこはせめてオトリにしてくれませんか?」


〖 撒き餌 〗


「・・・・・・そうならないように努力します」


ハンドくんの了承を受けて、共闘メンバーが3人追加になった。


「ところで、ベルくんは冒険者登録が済んでるのか?」


「ええ。王都へ戻った時に・・・まあ、その辺の話は後にしましょう」


「じゃあ、ギルドに行ってさっさと手続きをして宿に泊まるか。

従者部屋は3ついるのか」


〖 いえ。スゥたち5人は同部屋。

ロンドベルは廊下 〗


「それ・・・わざと言ってますよね?

共闘のメンバーでも、宿などは個々で用意しますから大丈夫です」


〖 シーナとルーナは今まで通り『従者部屋』が広い場合、スゥと同じ部屋で泊まりなさい 〗


「はい。分かりました」


冒険者ギルドに向かって歩きながら賑やかに話し合う。

その中で、青い顔をして最後尾をついてくるジョシュアとジョアンナの2人。


「ヒナルク様。あの彼女らは」


「うん。スゥたちも知ってる。

話し合いも済んだ。

その上で『共闘の継続』が決定した」


「・・・そうですか。

実は『その点』でも話があるんです。

今後のこともあるので彼女たちにも聞いてもらった方が良いのですが・・・大丈夫でしょうか」


「その判断はベルくんに任せるよ」


「ヒナルク様のことは?」


「話してない」


「分かりました。

では間違えないため『ヒナルク様』と呼ばせて頂きます」


〖 別に『ご主人様』と『師匠』と呼んでも構いませんよ 〗


「残念ですが・・・それをやると色々とヤバいので」


〖 それは面白そうですね 〗


「いまはやめて下さい。

『あとでの楽しみ』と思ってもらえると、すっごく助かります」


〖 まあ、条件を飲んでくれるなら、ですね 〗


あれ?ハンドくん、スゥたちとジョシュアたちの『クッション』にするつもりだ。


『そうです。

『どちらの事情』も知っている第三者です。

呼びつけるつもりでしたが、ちょうど良かった。

『渡りに船』

『飛んで火に入る夏の虫』』


最後のは違う〜。


『合ってますよ。

自ら危険の中に飛び込んで来たんですから』


じゃあ『火中の栗を拾う』は?


『仕方がないですねえ。

『渡りに船』と『火中の栗を拾う』にしましょうか』


ハンドくんはそう言うと、スゥとルーナが前に駆けていき、ギルドの扉を開いてくれた。



「あら。おかえりなさい」


受付にはバティが笑顔で出迎えてくれた。


「ただいま」と応えると、バティが驚いたように後ろの3人を見た。

ジョシュアとジョアンナの姉妹とロンドベルだ。

途中で会った、ジョシュアとジョアンナの2人パーティと合同でダンジョンをクリアしてきたことを伝えると、「ダンジョンクリア。おめでとうございます」と喜んでくれた。


「『共闘』の追加をお願いします」


「ヒナルク様。

本当に宜しいのでしょうか?」


「構わない。じゃあ手続きをお願いします」



バティは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに手続きを開始した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る