第304話


ジョシュアとジョアンナは冒険者としての矜恃を持ち合わせていた。

そのため「ダンジョンを出るため、私たちと共に戦って下さい」と頭を下げた。

『共闘』は冒険者ギルドで申請が必要だ。

しかし、こういう緊急性のあるダンジョンでは、一度だけ共闘関係になれる。

ダンジョンを出たら、そのまま冒険者ギルドに向かい正式な解除手続きが必要になるが。

その上で正式に共闘するかは別だ。

救助を依頼した側は状況によって相手にお金を支払う。

今回は『共闘』だけで、自力でダンジョンから脱出するつもりだ。

そのため一切の援助は必要がない。

ちなみに前回は善意で『食事と薬を与えて浄化クリーン魔法をかけただけ』だ。

しかし、今回は二度目のため善意を受けることは出来ない。


「共闘をお受けします」


さくらの言葉にシーナも反対しなかった。

スゥが言った「シーナが何かしたら、ルーナも一緒に責任を取らせるの?」という言葉が胸に刺さったからだ。

そして・・・


「私たちの弟が酷いことをして・・・謝って許されることではないのは分かってるけど」


「だったら謝るな。

謝罪は『自己満足』だ。

この子たちには『受け入れる時間が必要』だ」


さくらの言葉にジョシュアとジョアンナは口を閉ざして俯いた。


『自己満足』

その言葉はエンテュースの町の人たちのことを聞いた時に聞かされた言葉だ。

・・・さらに、自分たちが『従者失格』になった時にルーナが『見えないご主人様』に謝罪し続けていた。

それだって『自己満足』でしかない。


「2人に関係のない罪を背負わせて謝罪の言葉を吐かせ続ければ満足か?」


ご主人様に言われた言葉。


「すぐに答えを出さなくていい。

自分の目で見て判断しろ。

「許せない」のならそれで構わない。

ただ自分の感情と判断をスゥとルーナに押し付けるな。

スゥ。ルーナ。

お前たちも自分の判断をシーナに押し付けるな。

シーナは『あの男』に殺されかけたんだ。

その分、お前たちより恨みも憎しみも苦しみも大きい。

だが、間違えるな。

家族・兄弟・姉妹。

『罪を問われる』のは本人と、そう育てた親だ」



シーナはその言葉を心に深く刻んだ。

そして全員に言った。


「私はまだいかりや憎しみの『矛先』がどこに向かうか分かりません。

だから、『間違った向けかた』をしていたら、その場ですぐに止めて下さい。

・・・ご主人様。それでもいいですか?」


「構わない。

シーナが自分のココロと向き合って出した答えだ。

ジョシュア。ジョアンナ」


「「はい」」


「シーナが『答え』を出せるまで、『弟のこと』で謝罪するな。

お前たちの謝罪はシーナを苦しませるだけだ」


謝罪が出来ないのも彼女たちへの罰になる。

それに、謝罪を繰り返せば繰り返すほど『軽々しく』聞こえるだけだ。


『すでに『くちぐせ』に近いですね。

では状態によって『ハリセン』と『ピコピコハンマー』を使い分けましょう』


ハンドくん。『お願い』ね。


『分かりました』


ハンドくんの『第一発』はジョアンナへのハリセンだった。

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