第303話
「私たちは・・・ジョルトの姉、です。
ですが、私たちはジョルトとほとんど一緒に住んでいませんでした。
私たちは母と共に後宮・・・女性のみが住める家で母と3人で住んでいました。
ジョルトは、子供とはいえ『男』だったため、2歳の時に養子に出されました。
私たちも5年前に母が亡くなって、後宮から追い出されました。
しばらくは王都に住んでいましたが、ジョルトの犯罪を聞いて、冒険者をしながらエンテュースに向かいました」
ジョルトの姉・・・ジョシュアとジョアンナの双子の姉妹は自分たちの過去を話し出した。
決して『同情してほしい』『できれば許してほしい』という思いからではない。
スゥに言われたのだ。
「あなたたちのことを聞かせてほしい」と。
『相手を知り、理解するところから始まる』
違う種族と仲良くなるにはどうしたらいいか。
さくらにそう質問して返ってきたセリフ。
「個人同士でもそうだけど・・・
『相手がどんな人』か知らないと、まず『友だち付き合い』は出来ない。
そして相手を知って、次に理解する。
それによって、相手との距離を『はかる』んだ」
スゥはさくらに教わったことを実践して、目の前の2人を知ろうとしているのだ。
「私たちは2人だけで旅をして来た。
そして、途中で出会った女性たちと意気投合してパーティを組みました。
そして共闘でどんどんメンバーが膨らみ、あの時点で15人近くになりました。
でも・・・裏切られて。
アイテムボックスも荷物も奪われて、パーティから追放されました」
「それで、2人だけではボス戦に向かえず。
かと言って戻ることも出来なかった、ということですか?」
いまだ警戒感を隠しもしないシーナに2人は頷く。
「私たちの共闘メンバーには『隠密』の魔導具を持つパーティがいました。
そのため、戦闘をしないでボス部屋の前まで辿り着きました。
・・・そこで置き去りにされました」
「あのダンジョンを出てから何をしていたのですか?
師匠からは、町に戻り次第、元のパーティメンバーを訴えると聞いていましたが」
「ええ。冒険者ギルドに被害を訴えたから、アイテムボックスの使用は出来なくなってる。
・・・ただ、行方が分からないまま。
ユリティアで気に入った子を見つけて、その子が町を出たら追いかけて行ったらしいけど」
「・・・どっかで聞いたような話だな」
スゥたち3人の視線を受けたさくらが呟くと、3人は揃ってため息を吐いた。
「つまり・・・アイツらが狙ったのはヒナルクさんだった?」
「そうです。
ご主人をつけてダンジョンに入った所までは分かっています。
ですが、ダンジョンで休憩を取って以降、気配を感じなくなりました」
「・・・それはどこのダンジョンですか?!」
「『300階層ダンジョン』です。
それも序盤、5階までです。
それ以降は行っていないはずです。
瘴気は濃く、魔物は強かったので。
魔物から吐き出される瘴気が強かったから、先へは進めていないと思います。
そして、私たちはダンジョンを踏破するまで27日も掛かっています。
その後は回復するまで20日も休憩を余儀なくしました。
その間に見失ったのでしょう」
実際にはダンジョンのトラップの中にいたが、今のダンジョンに入った時点で一時的に解放している。
今頃はユリティアに近い場所で見つかり、神殿で保護されているだろう。
しかし、この場でそれを知っているのはハンドくんだけだった。
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