第261話
3日進んで1日休む。
そんな日程でさくらたちはダンジョンを進んでいく。
階層を降りていくと、さすがに瘴気の濃度が充満している。
それにあわせたように、魔物と魔獣の強さが増していく。
さくらは、休憩している結界内で『ハンドくんの
そして休憩する場所に大きな結界を張り、さくら用の結界も張って中を完全に浄化をしてから、ようやくシャボン玉から出される。
そうやって、さくらが瘴気に一切触れないように気を付けられている。
それでも『さくらの魔石』は毎日2万個は作られている。
それだけダンジョン内が濃い瘴気に覆われているということになる。
ダンジョン内のほとんどの瘴気がトラップ発動に使われているのに、だ。
トラップが発動し続けていれば、それを
そのために『さくらを追ってきた
もちろん、さくらたちがダンジョンを踏破すれば彼女たちは必要がなくなるので、トラップから脱出させるつもりだ。
ハンドくんは創造神と約束をしている。
『さくらが悲しむから殺さない。代わりに罰をあたえる』と。
今、トラップが発動している状態自体が『創造神から許可を貰ったハンドくんからの罰』なのだ。
『さあ頑張って瘴気を消費させ続けなさい』と。
そして彼女たちは誰ひとり気付いていない。
『階段を降り始めてから1度も休んでいない』ということを。
ただひたすら、階段の先にいるであろう
・・・それしか考えられない。
それはハンドくんが『手を加えた』訳ではない。
『理性を失い欲望をさらけ出す』濃い瘴気の中にいて影響を強く受けているからこそ、『疲れた身体を休ませる』という考えにも至らない。
『ここで休めばヒナルクをこの中の他の誰かに奪われる』としか考えられなくなっていた。
ちなみに、脱出するには『何日も何時間も降り続けてきた階段を30段ほど上がる』だけだ。
そのため、さくらの安全が確保されてから、ハンドくんは『幻覚』で下から魔物に襲わせるつもりだ。
戦うという本能を失った状態の彼女たちは、慌てて逃げようと階段を上がって行くだろう。
そうすれば、30段くらい『あっという間』だ。
そのままダンジョンから逃げ出してくれれば問題ない。
たとえ、正気に戻るまでダンジョンから逃げ出せなくても、5階までは弱い魔物しか出ないし、曲がりなりにも彼女たちは『冒険者』だ。
・・・自分で何とか出来るだろう。
さて、さくらはハンドくんに『完全に守られている』ように見えるが、実際には『さくらに結界は効かない』。
そのことはすでに『神の館』に住んでいる時点で判明していたし、それを良いことにハンドくんと一緒にコッソリ抜け出していたし、そのことが原因でヒナリが発狂した。
(・・・発狂はしてないわよ(ヒナリ談))
(泣き叫んでさくらを探し回っていただけだよな(ヨルク談))
(アレは十分『発狂』だ(セルヴァン談))
(『愛情の暴走』じゃな(ドリトス談))
だから、さくらはシャボン玉から抜け出そうと思えば出来る。
しかし、さくらはハンドくんがたったひと言〖 ダメです 〗と言えば言うことを(ある程度は)聞く。
聞かない時は『ハンドくんとのスキンシップ』が目的だからだ。
一度だけ。
ハンドくんがさくらを烈火の
ノドを痛めているのに無理して声を出そうとした時だ。
それ以外でも一度・・・さくらが狙われた『ボルゴたちの騒動』に無人島で制裁した時しかない。
この時も、ハンドくんの
さくらが狙われたからだけではない。
『たくさんの生命が奪われた』からだけではない。
・・・ヨルクの両親とヒナリの母、そしてセルヴァンの妻子の生命を奪ったからだ。
もちろん『理由があって』生命を奪ったのなら『仕方がない』だろう。
しかし、ボルゴたちは『自分の欲』で
『暴れたい』という欲望。
『セルヴァンを見返してやりたい』という欲望。
さくらの世界を知り、生命の重さと『死に別れのツラさ』を知るハンドくんは、そんなことで軽々しく生命を奪ったボルゴたちを許せなかった。
そんなハンドくんだからこそ、創造神を始めとした神々から信用も信頼もされている。
そんなハンドくんだからこそ、さくらは『ハンドくんは間違ったことは言わない』と信じ切っている。
もちろん、間違ったことは言わない。
・・・ただし『さくら限定』だが。
「ハンドくんがね。「ダメ」っていうことはやらないの。
だって、ハンドくんは『一緒に遊んでくれる』んだよ。
そんなハンドくんが『ダメ』っていう時は、『よっぽどのこと』なの。
ちゃんと『
言うことを聞かないで好き勝手したら、今までの『仲良し関係』は壊れちゃって『一緒に遊んでくれなくなっちゃう』よ」
さくらとハンドくんは『最低限のルール』を守っているからこそ、誰にも入り込めないほど強く深い絆で結ばれているのだった。
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