第180話


「なあ。オレのこと覚えてるか?」



さくらが声をかけると3人が小さく頷いた。



「オレだけ、そっち行ってもいいか?」



再び3人は小さく頷く。

さくらはベッドの端まで来ると床に直接座る。



「怖いかも知んないけどさ・・・君たちの首輪、オレに見せてくれないかな?」



そう言うと『犬種の10歳の少女』がすぐに近寄ってきた。

そしてさくらの前でペタンと横向きに座る。

ジッと首輪に集中すると、何か『黒いモノ』が首輪のカギ周辺で蠢いていた。

・・・これは『光魔法』の出番かな?



『此処は神殿です。神官にやらせて下さい』



さくらはやってはダメですよ。

ハンドくんに止められたけど、この程度なら『私でも出来る』よ?



『当分、デザートは『おあずけ』ですね』



わかった!

ちゃんと神官呼んで解錠してもらうから!

だから『おあずけ』禁止!!



「ありがとう」



そう言って目の前の少女の頭を撫でると、ニコッと笑って2人のところへ戻って行った。

さくらが立ち上がり、副隊長たちの所へ歩き出すと後ろから「あっ・・・」という小さな声が聞こえた。

振り向くと縋るような表情の少女たちと目が合う。



「ちょっと待ってて。アッチと話をしてくるだけだから」



そう言って副隊長たちを指差すと頷いてくれた。




「あの首輪。『闇魔法』が掛けられてる」


「えっ!では、どうすれば・・・」



ありゃ?

この副隊長さんも疲れすぎて『頭が働いていない』のか?



「此処は『神殿』だろ?ってことは・・・」


「あ!此処には希少な『光魔法』を使える人がいるから『解錠』出来る!」



おっ!この隊員の方が話が早い!

って思ったら「失礼します!」と言って部屋から飛び出して行ったよ。

・・・フットワーク軽いね〜。



目の前の副隊長さん。

頭の整理が済んでいないのかブツブツと言っているよ。




副隊長は放置して、少女たちのもとへ戻る。

そしてさっきみたいにベッドの端まで行って床に座る。



「話は聞こえたかな?」



そう聞くと頷く。

その表情は戸惑っているようだ。



首輪コレ・・・本当に外せるの?」


「ああ。外せる」



猫種の少女の言葉にチカラ強く頷く。

断言するだけでも、彼女たちの不安を少しでも軽くできるのだから。

少女たちはお互いに顔を見合わせているが、その表情には不安よりも安堵感の方が強かった。




「しかし、その後は色々と話を聞かれることになる。言いたくないこともあるだろう。それでも『大事なこと』なんだ。どんな小さなことでもいい。すべて話してくれるか?」


「いいよ!」



猫種の少女が頷くと隣にいた犬種の少女たちも首を縦に振る。

それと同時に「そうか!『闇魔法』で掛けられたから『光魔法』を使えばいいのか!」と副隊長が叫ぶ。

どうやら、無事に『正解』までたどり着けたようだ。

しかし「アレ?あれ?」と周囲を見回している副隊長の姿が滑稽で、見ていたさくらはベッドを叩いて笑う。

それにつられるように、少女たちもクスクスと笑い出す。

小さな2人はさくらをマネてベッドを叩いて笑っていたが、そのうちベッドの上に寝転がりバタバタと足をバタつかせて楽しそうにお腹を抱えて笑いだした。

年相応にはしゃぐその様子に副隊長も思わず口元を緩めた。






若い隊員は『神官長』を連れて戻ってきた。

「オイオイ」と思いつつ説明のため扉まで歩み寄ったが、「この神殿内で『光魔法が使えて一番信用できる方』をお連れしました!」と胸を張って言われたら何も言えなかった。

それは副隊長も同様だったらしい。

しかし若い隊員はちゃんと『説明』はしていたようだ。

年配の優しそうな目をした『神官長』は「首輪を見せて頂けるかしら?」と3人に近寄る。

「いいよー」と言いながら、真っ先に猫種の少女が神官長の前に駆け寄る。

神官長は首輪の鍵となる『魔石』に手を当てて『光魔法』で『解錠』を試みる。

『解錠』に使う魔法は簡単な魔法でいい。

『同種の魔法』か『相反する魔法』をあてることで鍵は開くのだ。

神官長は魔石に光の『回復魔法』を掛ける。

するとパーンッという音と共に魔石は砕け散り、少女の首からスルリと首輪が落ちた。







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