第170話


不快な思いをしながら男たちと歩いているとハンドくんが驚くことを教えてくれた。




『ジョルトは『銀板所持者』ではありません』



・・・あれ?

じゃあ『ニセモノ』ってこと?



『はい。『銅板』を銀で纏わせているだけです』



その銀って『剥がせる』?



『その必要はありません』

『身分証を『叩き割ればいい』だけですから』



二つに『チョンパ』出来る?

切断面を見せた方が『証明』出来るよね?



『銃で一発です』




誰であっても『目の前』で殺されるのって見たくないよ。






広場に着くと沢山の人集ひとだかりが出来ていた。

どの顔も嫌そうにしている。

鑑定魔法で、前列にいる数名が『ジョルトの身内』と表示されている。



『この場合の『身内』は『仲間』という意味ですね』



ギャングやマフィアの『ファミリー』みたいな意味合いかな。



『そうですね』



広場の中心にある噴水前でニヤニヤしながら集まってくる人たちを見ている男が『ジョルト』だった。

『賞罰欄』に『偽造』『詐欺』『殺人』などが表示されている。

それなのに『捕まらない』の?

なぜ?




『『銀板』だと信じられていますから』

『この町の中にいれば『鑑定』を受ける必要はありませんから』




そっか。

『入る時』に鑑定を受けるけど、中にいる間は鑑定を受けることが無いもんね。


・・・あれ?じゃあどうやって『中』に入ったんだろ?


偽造品で入れば何か表示されたよね?




『それに。毎回奴隷をどうやって増やしているのでしょうね』




ハンドくんが『意味深』なことを言う。

・・・どういうこと?




『忘れましたか?』

『この町には『奴隷市場』はないのですよ?』




普通に誰か『身内』が『買ってきた』?


私の疑問にハンドくんが説明してくれた。

この世界では『身分証』がすべてだ。

もちろん『奴隷購入や譲渡』も身分証で身元確認される。

奴隷市場では、その身分証の所持者が『奴隷の主人』と手続きされる。

譲渡にも『身分証』が使われる。

そして『奴隷商人』の許可証を持つ者しか『譲渡の手続き』が出来ない。

・・・その許可証を持ってる人、『此処』には1人もいないよ?


そして『主人』が奴隷を酷使したり折檻した結果に死なせても『殺人』はつかない。


でも・・・このジョルトには『殺人』がついているよね。




『『彼女たち』は何処から『連れてこられた』のでしょうね』




ハンドくんの言葉と共に、人々がザワついた。


最後列にいるさくらは『引き出される奴隷たち』が現れたことに『鑑定魔法』で気付く。

奴隷は獣人の少女3人だった。

2人がまだ10歳、1人が15歳。



ねえ。ハンドくん・・・




『ええ。そのようですね』





鑑定に表示されたのは15歳と10歳の『犬種』2人と10歳の『猫種』1人。

さらに神の加護により『特別仕様』になっているさくらの『鑑定魔法』以外では、決して表示されない彼女たちの『経歴前世』には『アリステイド大陸獣人族』とあり、さらに犬種2人たちには『前・族長妻』『前・族長娘』とあった。




・・・セルヴァンの『亡くなった妻子』が転生した姿だった。






広場に引き摺り出された奴隷の3人。

年長の少女は年下の2人を庇うように抱き締めて、周りを威嚇するように睨みつけている。


すると「その目はなんだ!」とジョルトが鞭を打ち付ける。

同時に少女の全身を電流が流れて苦しみ出す。

それを前列に座るジョルトの『身内』たちが下品な笑いで「しつけがなってねーぞー!」と囃し立てる。

「こいつはすみませんね〜」と笑いながら、ジョルトは再び少女に鞭を打ち付ける。

ジョルトが持っているのは『電流鞭』だった。




『あの中に『雷魔法』を発生させる魔石が入っています』




あれを奪ったらあの『ジョルト』という男を水浸しにして使ってやる!




『それは良い考えです』




ハンドくんが賛成してくれた。

よし!それを『褒美』に作戦を練るか。






ハンドくんと『これからどうするか』を計画中でも、広場の中央では少女たちへの『公開私刑リンチ』は続いている。

15歳の少女が下の子たちを庇うため、彼女1人がボロボロの状態だ。

今はチカラなく地面に横たわっているが、全身が帯電してるのか時々バチバチという音を立てている。




「お前たち3匹の中で誰か1匹だけ『助けてやらんでもない』」




ジョルトはそう言うとまたニタニタと笑う。

この場合『助ける』と約束した訳では無い。

『助ける『かも』しれない』と言っているだけだ。

あの笑いから見て、もちろん『助ける気は無い』だろう。



酷いキズだらけの姿なのに、下の2人を庇うために身体を起こそうとする15歳の少女。

庇われている2人は「「お姉ちゃんを助けて!」」と涙ながらに懇願している。

ジョルトたちはその姿を「じゃあお前らが死ぬんだな」と下卑た笑いで見下ろしていた。




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