第166話


食事は宿代に入ってるけど、アルコールは別料金。

料理にあわせて赤ワインを注文したら酒場のあんちゃんたちが奢ってくれた。


・・・兄ちゃんたちって、私が宿屋に来た時から飲んでるよね。

酒場は24時間営業だから、宿屋に泊まらずに酒場に居続ける旅人もいるらしい。


それなのに上階の居室が静かなのは、上階の壁や扉には『消音魔法』が使われているからだ。

私の部屋には結界も張ってるから町中まちなかの賑わいも馬車の行き交う音も入ってこなくて静かだけどね。


・・・なんかあればハンドくんが教えてくれるって安心感もある。




夕飯を食べ終えて部屋へ戻る前に「今日は疲れたから誰も通さないで」と頼んでおいた。

そりゃあ『今日の昼前』に到着して買い物に出かけていたんだから。

「疲れた」と言ったら分かってもらえた。


部屋には『魔石の結界』が張ってある。

魔石の結界だと張る時に『光らない』んだ。

ハンドくんの結界だと白く光っちゃうもんね。

今日張ってるのは「遠慮してね」って、やんわり『お断り』の軽い結界。

露天商が来た時は、ハンドくんが結界を解除してくれていた。

ちなみにこの世界の宿屋は『カギはチェックアウト時に返す』方式。

宿屋の従業員が『泥棒』をするのも、逆に疑われるのも防ぐためらしい。

そのためベッドメイキングも『部屋に届いた荷物』のチェックもしない。

・・・だから、部屋の外に置かれたハズの荷物を、ハンドくんたちが既に片付けていることに気付いていない。


今日の泊まり客が私たちだけだからだろうか?





「たーだいまぁ〜〜」



部屋に入り、そのままベッドにダイブする。

すぐにハンドくんたちに靴や上着を脱がされる。

その後に清浄クリーン魔法をかけてスッキリさせてくれた。

お風呂に入りたくなれば『無人島の別荘』を使うが、今の私は『旅人』。

ヘタに石鹸の匂いをさせていると怪しまれてしまう。

『温泉』のある街なら問題ないだろうが・・・


この町は『共同浴場』が2つある程度。

ひとつは『金・銀板専用』でセキュリティが万全。

それに比べてもうひとつは・・・

うん、まあ。大なり小なりの『犯罪』が横行してる。と言っていいのか。

『行くなら『安全な温泉』か別荘にして下さい』とハンドくんから止められている。

強引に『強行』なんかしようものなら、『浴場の客を全員ハダカで追い出して強固な結界を張りますから』との強迫『お・ね・が・い・です』・・・・・・をされている。




腰から外されたポーチは枕元に置かれている。

そのポーチからホルスターに入れた銃を取り出す。

マガジンの穴に私が精製した魔石をあてたらすんなり吸い込まれた。

どうやら『際限なく』魔石をチャージ出来るようだ。

マガジンをグリップに戻して握ってみる。

私の手にフィットしてて、特に不具合は感じない。



『試し撃ちは『無人島』でしてください』



今はしないよー。

ただ『私の魔石』でも使えるのか試したかっただけだもん。



この判断を、翌日少しだけ後悔することになった。





『そろそろ『おもちゃ』は片付けて下さい』



ハンドくんがプリンアラモードを出してくれたので、銃をポーチに片付けて食後のデザートタイム。

その間に、ハンドくんたちがコソコソしてるけど・・・



「何してるの?」


『先程の『残党取りこぼし』がこの近くを彷徨うろついていたので、気絶させてからまとめて詰所前に放り出してきました』

『これで明日も安心してお出かけして頂けます』


「ありがとう」



私の安全は、ハンドくんたちの『手』で守られているんだなー。

武器や防具を見ても、セルヴァンやドリトス、ヨルクとジタンに守られてるし。

創造神がくれた『銀板』も、私を守ってくれてる。





みんなに感謝だ。







翌朝、1階に降りたら疲れた表情をした宿屋のオッチャンとザーニたちに迎えられた。

どうやら勝手に武器を選んで持ってきていたらしい。

ただ、宿屋のオッチャンがくい止めてくれていたため2階に上がれなかったようだ。


オッチャンGJグッジョブ



「先に飯を食え」とオッチャンに促され、カウンターに座る。

ワンプレートのモーニングだった。

トーストにスクランブルエッグ、ソーセージにサラダに果物。

そして『おかわりし放題』のコーヒー。

この地方では定番のモーニングらしい。


うーん・・・ヨーグルトが食べたい。



『用事が終わったら一度戻ってください』

『ヨーグルトを用意します』



うん。ありがとう。




食後にザーニと武器屋のグラハムに「待ってました!」とばかりに相手をさせられた。

アイテムボックス化した、スマホを横にしたような大きさのポーチを渡されて『目録』を見せられた。

そして、目録に書かれた武器の説明を受けてからポーチごとくれた。

お礼を言って快く受け取る。


武器の代金はやはりザーニが支払ったらしい。

そしてポーチはグラハムが支払ったそうだ。

『アイテムボックス』化したポーチは結構高額で、それひとつで『家が1軒買える』とのこと。

ザーニの店で売ってるのかと思ったら『雑貨屋』があるらしい。

2人からは雑貨屋の場所を聞き出した。


よし!今日はそこへ買い物に行こう。


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