第165話


ところでザーニは何しに来たんだ?と思ってたら、この2人『幼馴染み』らしい。

それで、私にくっついて来て文字通りの『冷やかし』をしたかったらしい。

っていうか『店の騒動の鎮静化』を放棄してまで、ついてくる必要があったのか?

・・・ああ。『面倒やっかい事』から逃げてきたのか。


まあ、装備屋っていわば『防具屋』だったし。

2人のじゃれ合いも、「武器の方が」「いやいや。うちの装備が」など『矛盾』の語源になった昔話のような内容を討論してる。

ハイハイ。お互いの『一流品』をぶつけ合って砕いて下さい。



2人は放っといて、店内に飾られている武器を見ていく。

モーニングスターとかゲームで見聞きした武器名も発見した。


・・・・・・で?

なんで『コレ』がここにあるのかな〜?



『欲しいです』



・・・だろうね。



「ああ!お気に召された武器が御座いましたら申し出て下さい。私がすべてお支払い致します!」


「あ?いや良いですよ」


「いえ。重ね重ねご迷惑をおかけした『お詫び』です!」



断ってもしつこく食い下がる。



「コイツはガキの頃からしつこいから『お詫び』をするまで付きまとうぜ」


「・・・めんどくせー」


「だろ?」



なんか勝手に武器を選んでるし。

なんで店主も一緒に選んでるかなー?

・・・それも張り合ってるし。




カウンターにあるイスに座って呆れて見ていたら、ハンドくんから『果物がたくさん届きました』と連絡が来た。

写メで『リヒ』が木箱で来ていた。

他にも店頭で並んでいた色々な果物も届いているらしい。

「どんな味なのかな?」と聞いたらベリー系で甘酸っぱいそうだ。

・・・誰が味見したんだ?と思ったら、『毒味役』は神々だった。


『少しおすそ分けしました』とのこと。

たぶん、たかられたんだろうなぁ。

『この世界で一番偉い神様』に。



果物は傷まないように『保存庫』に放り込んだそうだ。

ハンドくんたち専用の『保存庫』は2つあって、ひとつは『時間が停止した空間』。

果物などの保存に最適らしい。

もうひとつは『温度の一定化』。

時間は経過するが温度は変わらない。

こちらは煮込み料理に適してるようだ。


『保存庫』とは別に『保管庫』もある。

冷たいものは冷たいまま。

温かいものは温かいまま。

つまりアイスを置いた横に熱いシチュー鍋を置いていても、溶けないし冷めない。

もちろん食中毒も起きない。



「そろそろ頼んでおいた荷物が宿に届く頃だ」と店を後にしようとしたら「「どこの宿だ?」」と声を揃えて聞かれた。

けっこう『仲良し』じゃん。

『似た者同士』だから『同族嫌悪』なんだろうな。



「『銀馬亭』。じゃな」



店を出てから気付いた。

あー。

そういえば『銀馬亭』の1階は酒場だっけ。

コイツら来そうだよなー。


まあ。

来たら来たで奢らせてやろう。






宿に戻って立て替えて貰ったであろうお金を払うためにカウンターに行ったら「お金、支払われてなかったのですか?」だって。

あれ?何にも言われなかった?って聞いたら、立て替えの代金を払おうと声をかけたら「お代はけっこうです」と言われたらしい。



・・・よっぽど『やましい』事があるんだな。




とりあえず、明日にでも露店に顔を出して支払ってやるか。

もちろん『銅貨5枚』だけね。

オマケというか口止め料はタダだよね?



ハンドくんにはこのまま夕飯を食べる旨を伝えると『デザートは?』と返ってきた。

「もちろん。別腹♪」と返信したら『本日のデザート』のタイトルでプリンアラモードの写メが届いた。

これは神々に出したんだな。



うん。

やっぱりザーニたちが来る前に部屋へ帰ろう。

『酔っ払いの絡み』ほど迷惑なものは無いからなあ。

『ハンドくんお手製のデザート』と『酔っ払いの絡み』を天秤にかけることはしない。

『デザート』の方が重いに決まってる!



一応、酒場メニューを確認してみる。

この大陸でも『カクテル』が主流なんだな。

圧倒的に『酒の量』が少なくて済むからなんだろうね。

そしてアルコールが少なければ酔わない。

だから『飲む杯』が増える。

結果『アルコール1杯分』が『カクテル数杯分』の代金になる。

果物も安価だから『ぼろ儲け』だ。




宿屋(兼酒場)の料理は美味しかった。

さすが門番ジグが自信満々に紹介するだけのことはある。

ちなみに今日はドミグラスソースの『煮込みハンバーグ』だった。

サラダやバゲットも付いていて、メイン以外は『おかわり自由』だった。


ハンドくんの説明だと、スープは野菜タップリのスープだったが、何故かシークヮーサーが隠し味に入っているそうだ。

野菜の『臭い消し』で生姜を少量入れるようなものだろうか?


ハンドくんたちは『空いた時間を有効活用』と称して、キッチンを見学していたらしい。

料理の『実験台』なら、ヒマな神々にどうぞ。

・・・時々『激辛メニュー』を食べさせて反応を楽しんでいるのは大目に見ましょ。


ハンドくんの料理に『失敗』の二文字がないのは十分分かってる。

でもね。

ハンドくんの辞書には『失敗』の二文字はないけれど、『挑戦』の二文字はあるんだよね・・・




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