第163話


そうそう。

オッチャンはこの店の『オーナー』なんだと。

そしてあの大金は従業員の『給料』だった。


・・・そんな大事なもん、スられるなよな。



「そうだ!さきほどの『お礼』に、その2着をお譲りします!」



普段なら断るけど、これって『清浄クリーン』魔法と一緒に『着用者わたし限定』の『清浄化』魔法もかかってる。

・・・この気はセルヴァンとヨルクだ。

だから『私の上着』を使ったんだね。



「わかりました。ありがたく頂きます」



ポンチョを着用して、コーディガンをアイテムボックスにしまう。

ポンチョにしたのは、腰に付けてるポーチが『見えなくなる』から。


試着して気付いたけど、コーディガンだと今のポーチを付けてると『ポコン』って飛び出してて「腰に何か付けてますよ~」って丸わかりだった。

コーディガンを着る時は薄めのポーチを付けなきゃね。




「ところでその肩布はどこで?出来たら譲って頂きたいのだが。金ならいくらでも・・・」


「すみません。これは『父から譲られた』物なので」



申し訳なさそうに言うとオッチャンは慌てて謝罪してきた。

そりゃあ『父から譲られた』物を、カネのチカラで奪い取ろうというのは商人あきんどの風上にも置けない。

ブレスレットが袖の中に隠れてて良かったよ。


っていうか『銀板』相手にたかるか?

『銀板』の持ち物だから『高価なもの』だと思って欲しがったとか?


もうひたすら頭を下げてきたよ。



「そんなに謝らないで下さい。次に武器屋へ行きたいんですけど。信用出来るお店を教えて頂けますか?」


「おお!それでしたら次のつじを右に行くと5軒目にございます」





お団子ザーニにお礼を言って、店を後にした。




泥棒少年少女たちはまだザーニの装備屋の周辺にいる。


一応近くで見かけた警備隊員に銀板を見せて『装備屋の周囲に、客を品定めしている子供たちがいる』と伝えといた。

アリステイド大陸とは違い、此処は『階級制度』の世界だから『胡散臭い』私でも銀板を見せれば身元は保証されたようなもの。

『銀板所持者』の指摘だもん。

これで『厳重に監視』がつくよね?





紹介された武器屋に入ると、こちらでも身分証の提示を促された。

でもここでは『身分証のランク』で購入出来る武器が違うため確認したそうだ。

別に『銀板』と『金板』は差別がないらしい。

まあ『金板』は護衛とかついてて『周りが戦う』から、まず武器は必要がないからね。

購入するなら『実用性のない』お飾りの武器だろう。

『銅板』は『石製』『銅製』までの武器。

そして『板なし』はなまくら木剣ぼっけんなどの『低級魔物相手』でも苦労しそうな『木製』武器だそうだ。

『鈍は手入れすれば武器になるんじゃね?』と思ったら、『鈍は手入れしても鈍』だそうで、研いでも刃こぼれが酷いらしい。

・・・製鉄技術が悪いんじゃないか?




「何を買うかい?」


「うーん。身を守るのに『短剣』と・・・銃かな」



ここでも『鑑定』に引っかかる武器があるんだけど・・・



「その短剣と、そっちは銃・・・か?」


「ああ。これは『魔石』を吸い込ませて使う珍しい銃だ」



店主が銃の説明を始めた時、店内に警備隊員が一人入ってきた。

店主は露骨に不快な表情をする。

警備隊員は何やら申し訳なさそうに寄ってきて「装備屋から『上着を試着してた客が支払いもせずに出ていった』と訴えがあったのですが」と言ってきた。

警備隊員も相手が『銀板』だと知っているから下手したでに出てる。

ヘタに刺激したら、自分のクビが文字通り『飛ぶ』からね。

家族とか警備隊全員のクビも、胴体と『バイバイ』しかねない。


それにしても訴えたのはザーニじゃないだろーな。

・・・狙いはなんだろう?


まさか・・・ザーニのオッチャンが欲しがってた『翼族の羽衣』を横取りするために誰かが画策したとか?




「うーん・・・此処で悩んでても仕方がねーよな。とりあえず直接『装備屋』に行った方が早くね?」


「そうして頂けると助かります」





・・・ハンドくん。まだ出なくていいからね。






ザーニのお店に戻ったらもう『取り調べ』が個別にされていて、私の姿を見たザーニが丸い身体を揺らしながら慌てて寄ってきた。

私が警備兵を連れてきたと思ったようだ。

「親から譲られた肩布羽衣を奪おうとした」と訴えられたと思ったのか?

とりあえずザーニが口を開くのを手を上げて止めた。

ザーニの誤解を解くにはこちらが『何しに店へ来た』のかを知ってもらった方が手っ取り早い。



「なあ。誰が『オレを訴えた』んだ?」



後ろに控えている警備隊員にそう聞いたら、ザーニが目を丸くした。

だから、武器屋で買い物をしていたら「装備屋から『上着を試着してた客が支払いもせずに出ていった』と訴えがあった」と言われたことを話した。



「いえいえいえいえ!私の財布を拾って頂いたお礼として上着を差し上げただけです!」



ザーニの証言を聞いた警備隊の一人が「はい。そちらの方が財布を拾われて、店主殿にお渡しになられておりました」と認めてくれた。

私は気付かなかったけど『あの時、そばにいた警備隊の一人です』とハンドくんが教えてくれた。

・・・同じ制服着てるのに、よく覚えていたね。

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