第144話



非公開の国際会議が行われた翌日。

各国で徹底的に調査がなされた。

全大陸で『家探やさがし』がされたのだ。

それこそ空き家も山小屋も別荘も隠れ家も王宮も子供の秘密基地も。


そして見つかった子供たち。

中には我が子に恵まれず『望まれて養子として買われた子』もいた。

しかしどんな形で生活していたとしても、子供たちは『誘拐事件の被害者』なのだ。

「家族の待つ家に帰ろう」と言われて喜ばない子はいなかった。


救出されたすべての子供たちは、誘拐されてからの記憶を完全に消された上、『部屋に閉じ込められていた』『強制労働をさせられていた』などというニセの記憶を上書きされた。

そして子供たちの無事と帰りを信じて待っている家族のもとへと帰って行った。


もちろん『子供たちを売った』身内は、子供たちが帰る前に捕縛されて投獄されている。

また『子供を買った貴族』たちは、その目的に関係なく捕縛された。

役人に賄賂を渡して罪を逃れようとする者もいたが、誰一人として成功しなかった。

そしてその屋敷で働き、子供たちの存在を知りつつ黙秘していた者も捕縛された。


そしてコーティリーン国には『歯向かえば破滅』という脅しに近い信書が各国から届いた。

今でも危亡きぼうひんしているのだ。

ここで下手に歯向かえば完全に滅びてしまう。

コーティリーン国は無条件で受け入れるしかなかった。


各国から集められた捜索隊がコーティリーン国内をしらみ潰しに調べて回り、各家庭で『隷属の首輪』をつけられて『奴隷』としてき使われていた子供たちを助け出すことができた。

研究所で『人体実験』にされていた子供たちも見つかった。

一人も欠けることなく救い出す事ができたのは不幸中のさいわいだった。

殆どの子供たちは口にするのもはばかれるほど酷い扱いを受けており、子供たちはすぐに治療師たちの治療を受けるとともに記憶の書き換えが行われた。


各地で行方不明になった子供たちの名簿と保護された子供たちの名前を照らし合わせて、全員が助け出されたのが確認されて調査隊が解散したのはボルゴたちの投獄から半月後というスピード解決だった。



この事件以降、外交官と言えども出入国時には『鑑定石』で鑑定を受けることになった。

外交官や特使から反対の声が出るかと思われていたが、それは杞憂に終わった。

自らやましい所がないと証明するには『鑑定を受けるのが一番』と誰もがこぞって賛成したのだ。




問題はコーティリーン国だ。

他族を・・・特に『人族』を見下しているのは『天罰騒動』以前から周知の事実だった。

だから『さくら様襲撃事件』でエルハイゼン国の王城を攻撃した事に驚いた。

しかし、何となく「ああ。とうとう『やらかした』か」と納得もしていた。


そして今回発覚した『人身売買事件』。

それにまた『さくら様が狙われた』事が知れ渡った。


国をあげて一斉に『探し』して回ったのだ。

流石に上位貴族たちの中からは反感が出た。

突然兵士が30人と役人10人の『1チーム』が押し寄せて来て「今から屋敷内を『家探し』させて頂きます。これは国王命令王命です」と言われても「はいどうぞ」と招き入れられる訳がない。

その時にまだ秘匿だった『さくら様誘拐未遂事件』の話が持ち出されて「これは『さくら様』の御身を守るためです」と言われると誰もが納得したのだ。

さすが『さくらの親衛隊ネットワーク』だ。

・・・しかし『秘匿情報』にもかかわらず『さくら様』がかかわっていると『秘匿』にならないことも判明した。


そして呆気なく『人身売買』がバレて捕縛された貴族も多かった。


貴族たちは『さくら様の敵かいなか』と問われてすんなりと『誰から買ったか』を自白。

そして『奴隷を買い替えて不要になったら『回収』する』という施設が複数あると判明した。

その施設をすべて調べたところ、後ろに『コーティリーン国』がいたのだ。

ちなみに『回収された子供』はいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る