第107話
ポウッと暗闇の中でさくらの身体から柔らかい光があふれ出す。
その光が周囲に広がり闇を払った。
腕の中のさくらはどうやら落ち着いたのだろう。
震えもなくなり安心したように微笑みを浮かべて眠っていた。
さくらを壁側に置かれているソファーベッドに寝かせたセルヴァンは、ヨルクとヒナリに近付く。
セルヴァンの『行動の理由』に気付いたヨルクが逃げ出そうとしたが、それより早くハンドくんが結界を張ったため逃げられなくなった。
「さて。・・・どういう事か聞こうか」
「ま、待てって!誤解だ誤解!」
「さくらが誤解するようなことを言う方が悪い!」
セルヴァンのゲンコツを脳天に受けたヨルクは直後にハンドくんたちのハリセン集中攻撃を受けた。
「なんでオレなんだよ!言ったのヒナリじゃんかー!」
「ちょっとヨルク!」
黙っててよ!と慌てたヒナリだったが、セルヴァンのゲンコツからは逃れられなかった。
そしてセルヴァンはヨルクの「独り占めしやがって」という言葉に対しての『制裁』も忘れなかった
2人は正座でセルヴァンとハンドくんから説教を受けた。
時々、セルヴァンの『鉄拳』とハンドくんの『ハリセン攻撃』を受けながら。
特にハンドくんの『次はありません。さくらのいる場所で『さくらバカ』と言って悲しませたら、二度とさくらに会わせませんよ』という『
さくらがいない所で『さくらバカ』と言っていれば、さくらの前でもクセで言ってしまう可能性はある。
2人はその後もハリセンやゲンコツをもらい続けることになる。
誰もさくらが悲しむ姿を見たくはないのだ。
「でもさー。『親バカ』もあるなら『さくらバカ』だってあってよくねーか?」
ヨルクはその言葉と共にハンドくんたちからハリセン攻撃でフルボッコにされた。
「だから!何でヒナリはハリセン受けないんだよー!」
『『さくらバカ』という言葉を最初に言い出したのはヨルクですから』
「『自分の言動には責任を持て』という事じゃ」
「・・・・・・ヨルクきらい」
どうやら、ヨルクが叫んだ時には結界が解除されていたようだ。
目覚めていたさくらはドリトスに膝だっこされて涙を浮かべていた。
セルヴァンのゲンコツより、ハンドくんのハリセンより、涙を浮かべたさくらの『ヨルクきらい』が一番『効いた』ヨルクだった。
食事のためエルハイゼンのリビングへ戻ろうと話したが、それをさくらが一番イヤがった。
この部屋にいれば『早く回復できる』から離れたくないらしい。
確かに足以外はだいぶ回復している。
足も指を『ぴょこぴょこ』と動かせるまでになった。
まだ足を上げたりヒザを曲げたりとか、もちろん立ったり歩いたりも出来ないが・・・
此処で過ごした数時間でも目に見えて『回復』しているのだ。
さくらの気持ちが分かるから、誰も何も言い出せない。
「ここでゴハン食べるのー」
座卓に突っ伏してワガママを言うさくらに、膝だっこをしているドリトスは苦笑する。
まだちゃんと足が動かせないさくらだ。
サッサと抱き上げて連れて行くのは簡単だ。
でもさくらには『納得』してもらってから連れて行きたいのだ。
『さくら。『食後のデザート』は『おあずけ』ですか?』
ハンドくんがケーキの乗った皿を見せる。
「チーズスフレ!」と目を輝かせるさくらに『リビングでゴハンを食べる『良い子』にしかあげません』とハンドくんが言い切る。
それにつられて「ハーイ!リビングでゴハン食べまーす」と右手をあげるさくら。
『『食後』のデザートですからね』と念押しされたのはリビングに移動してすぐに「食べる〜」と言わないように『牽制』したのだろう。
ドリトスがさくらを抱き上げて『さくらの部屋』からリビングへ移動する。
ガラリと空気が変わって『さくらの部屋』が『異世界と繋がっている』ことを改めて実感した。
さくらは別の『何か』を感じたのかキョロキョロと周りを気にしている。
「どうした?」
その様子を心配したセルヴァンに聞かれたが、さくらは不思議そうに小首を傾げてから左右に首を振った。
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