第106話



そして・・・創造神の話だと、公式に発表されているこの災害での死者・安否不明者は数千人。

実際は高速道路や一般道などを『偶然通りかかって巻き込まれた』人もたくさんいたため、『公式発表』の数より『倍』はいるらしい。

繰り返された大爆発+大火災だったため『跡形あとかたもなく』吹き飛んで消えてしまったそうだ。


最初の爆発で建物は瓦礫と化し、火災が瓦礫ごと埋もれた人を焼き、二次・三次と続いた爆発が痕跡のすべてを吹き飛ばした。

住人は住民票に加えて、家族や同僚、友人知人の証言で『安否不明者』に加えられたし、会社で『夜勤』だった人たちも勤務表などで証明された。

それ以外に『間違いなく巻き込まれた』にもかかわらず証明出来ない被害者は『通常の行方不明者』『家出捜索人』として片付けられているようだ。


簡単に言えば『慰謝料を支払う相手は少ない方がいい』からだろうね。


・・・そして私は安否不明者の『仲間入り』をしているそうだ。


「確かに『異世界ここ』にいるんだから安否確認はムリだよね~」


そう笑ったら創造神に「笑い事か?」と呆れられたが「じゃあSNSに『無事だよー』ってアップしてもいい?」と聞いたら「そいつはダメだな」と笑われた。




最後に創造神が『俯瞰ふかん』で見せてくれた。

広範囲で物の見事に『なにもない』。

所々で見えるアスファルトの残骸で、そこがかつて『道』だったと分かる程度だ。

そこで分かった、私の住んでいた所が『ギリギリ』だった理由。

堤防と堤防に挟まれた南側の地域の方が大きな被害を受けたのは分かった。

その堤防を乗り越えて『爆発の余波を受けた』という感じだ。

ガス漏れの現場周辺も広範囲に吹き飛んでいた。


「爆発・炎上したとはいえ『こんな状態』になるもんなの?」


どんなにガス爆発・炎上したとはいえ『何もなくなる』ってあるのだろうか?


「それは『この世界の神』が『決めたこと』だ」


「・・・天罰?」


いや。間違いなく『人災』だ。ただ『あまりにも酷い状態』だから・・・『残された者たち』も『惨状の映像をみた者たち』も『精神に異常をきたす』」


「創造神は『その映像』をみせてもらったの?」


そう聞いた瞬間、イケメンの眉間にシワが寄る。

・・・そんなに『酷い映像』だったんだ。



私のつたないアタマでも想像できる。

千々にちぎれて吹き飛んだ『万』を超える遺体。

捜索に向かった自衛隊ですら『目を逸らす』だろう。

マスコミやスマホ片手に『面白半分』で現場に入った野次馬たちも心が壊れただろう。


聞いた話だと『尾根に墜落した史上最悪な飛行機事故』の現場に入った捜索隊やマスコミの人たちが、あまりにも酷い現場に『心を病んだ』らしい。

他国で起きた『2棟のビル崩壊事件』では更に凄惨な現場だったために『心が壊れた』そうだ。


『元の世界』の神さまは『そうならないよう』に『消滅』させたのだろう。



「・・・みせんぞ」



無言になった私を心配したのだろう。

軽く冗談を言うように話す創造神の顔には、まだ眉間にシワが残っている。


「イヤな映像モン思い出させてゴメン」


私の言葉に創造神は一瞬驚いた顔をしたがすぐに微笑み「あれは『現実には起きなかった』ことだ」と言いながら頭を撫でてくれた。



創造神との会話中もずっと無言で私を抱きしめているアリスティアラ。

カタカタと私に抱きついて震えているアリスティアラに苦笑する。



「ねぇ。アリスティアラ」


そう呼び掛けるとビクリと身体を震わせる。


「こう考えられないかな?『私はその事故で運良く生き延びて、この世界に『引っ越してきた』んだ』って」


そう言ったらアリスティアラもだけど創造神まで一緒になって驚いていたよ。



だってこういう事故が起きたら『避難』とかするでしょ?

たくさんの人たちが亡くなったり行方不明のままの場所では『捜索作業』があるから当分・・・

そして爆発は『工場』も含まれている。

もし有害物質とか検出されていたら何十年も住めないし。

それに『住むところ』をなくしたら引越しするよね。

その『引越し先』が『この世界』だった。



・・・そう考えちゃダメかな?



「ねぇ。アリスティアラ。『生きる場所をなくした私』に『住むところ』を与えてくれたのが貴女なんだよ」



この世界ここへ連れて来てくれてありがとう。

そう伝えて抱きしめ返す。





私はアリスティアラの涙をはじめてみた。



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